小さな青春

□*小さな青春*第4弾
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「……ふぁ〜〜………」


体が沈み込む程柔らかいベッドで、フッカフカもフカフカの白い掛け布団で眠る様は、確かに貴族に見えなくもない。


が、しかし、花柄のパジャマ姿で起き上がり、寝ぼけ眼で歩き出した途端……

ドタッ

と倒れる様は、庶民どころか、ただのドジにしか見えないだろう。




「お嬢様。お顔、どうかなされましたか」


朝食を摂るお嬢様の鼻とおでこが赤くなっている事に気付いた彼女の世話役・瀬和(せわ)が言った。

くノ一忍者のような風貌の瀬和がお嬢様の顔を覗き込むと、お嬢様は
「べつに」
と不機嫌そうに答えた。




「はあっ……」


朝食を済ませて、自分の部屋に戻るなり、お嬢様は疲れ切ったようにフカフカの布団に逆戻りした。

広い部屋には豪華な家具や巨大で─●万もして、世の中には母親に「高いからダメ」と買って貰えない女の子が沢山いるであろう─様々なぬいぐるみが並んで、チェック柄のピンクのカーテンや、純白の化粧台と鏡…──女の子らしいものだ。

部屋は、広さからしても貴族風である──



「庶民のセーカツは疲れる」


バスに乗り遅れた昨日のことを思い出し、ため息をまた一つ。



「今日は休みだし、気分変えにお出かけでもしようかな」


失礼だが、やはり庶民臭さを隠せない。






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