小さな青春
□*小さな青春*第5弾
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「ありがと。
今年も“義理”か」
ヒナからチョコを受け取って、美月は自嘲気味に笑いながら呟いた。
しかし、ヒナは俯き加減にこう返した。
「当たり前じゃんっ…!
“義理”に決まってるよ……」
勿論、美月には言わないだけで、ヒナの気持ちは本命──
…しかし、その気持ちを伝えることなく、これで4回目の─義理チョコと偽った本命チョコをあげたのだ。
そして、これが、二人の想いを裂くこととなった。
「(これだけ経ってもか…。
中学を卒業して…高校に入って一年経っても……ヒナの、俺への気持ちは“義理”……─
やっぱ、ヒナにはずっと“本命”がいるんだ…。
…なら…)」
美月は、ヒナのチョコを見つめて決意した…
「(もう…あきらめよう。
ヒナへの気持ちは…これで、断ち切ろう。
ヒナの恋のジャマだけはしないように──義理のままなら…嫌われるよりマシだ……)」
─こうして、美月は長く想ってきたヒナへの気持ちを断ち切った─
─互いに気付かぬ両想いは、結局互いに想いを告げぬまま終わった─
そして、今……
ヒナへの気持ちを諦めた美月は、ヒナにはっきりと“別れ”を告げた。
もうヒナから義理チョコは貰えないかも知れない…
それでも、今の美月には、ヒナ以上に想う女性がいる─
ヒナとの別れをするほど、山本元に対する美月の気持ちは強い──
それでも……
「今更っ…なんなんだよ…!」
美月は、拳を握りしめて泣いた。
─ヒナにキスを奪われて…美月の、ヒナに対する想いが戻ろうとしたのは確かだ─
─だからこそ…
山本元を愛する今の美月は、ヒナへの想いを無理矢理にでも…完全に断ち切ろうとしたのだ─
第48話
□美月の初恋の真実□
終わり