小さな青春
□*小さな青春*第2弾
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第20話
□想い□
俺は、息をするのを忘れていた。
ヒナは、瞬きをするのも忘れているらしい。
只、驚きだけじゃない、悲しげな瞳でおそらく…ソレを見つめている。
ようやく瞬きをしたかと思うと、ヒナは突然俺の方を振り向く。
ヤバイ、と思った時には遅く、俺とヒナの目には互いが映っていた。
意外にも俺と違ってヒナの表情には驚いた様子はなく、悲しげで少し潤んだ瞳を俺に向けている。
またしても沈黙。
「…何?」
耐えられなくなったのは俺。
出来るだけ、訳が分からない。という様子を繕い、素っ気なく聞く。
「ううん。何でもない」
俺から下駄箱に視線を移して、呟くように答えるヒナ。
嘘だ。
目は確実にソレを見てる筈なのに。
何もないわけはない。
「ラブレターでも入ってたのか」
からかうみたいに、嫌味っぽく言う俺。
答えは知っている。
春夏に口止めされて教えてなかったから、ヒナはさっきまで知らなかっただろう。
でも、俺はハートシールが貼られたピンクの封筒がヒナの下駄箱に入ってるのを知ってる。
正直、冗談のように言ったつもりだった。
でも、ヒナは…
「うん、そうみたい!」
と、笑顔で俺にソレを見せた。
ピンク色の封筒…
ラブレターを──