小さな青春

□*小さな青春*第4弾
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第32話
□山本ハジメは大マジメ□





「7時55分──
うん、時間通りだわ」


ちょっぴりお高い、お気に入りの腕時計で時間を確かめると、彼女は満足げに微笑んだ。


誰もいない玄関の下駄箱─
光景は毎日変わらない。

彼女─山本元にとっては毎日の決まり事。

7時55分に登校─
1分とて遅れた事は……たまにしかない。

妹離れしない兄のせいで遅れそうになっても関係ないのだ。






2年6組

朝…

教室に飾られた花を毎日生けるのは彼女─

閉めきった教室の窓を開けるのも彼女─

黒板と黒板消しを、隅々まで綺麗にするのも─

ごみ箱の中身を、校内の焼却炉まで捨てに行くのも─


そう、彼女・山本元は、完璧なのに完璧を目指す超完璧主義者なのだ。







「山本さん、おはよー」


他のクラスの生徒達には近寄り難いという認識をされていても、2年6組での山本元はクラスの中心的な存在である。

登校したクラスメイトは一人の例外もなく、彼女と挨拶を交わす。


「山本さぁ〜ん。ここ、解んないんだけど教えてくれなぁ〜い?」


朝から、クラスのギャル連中に宿題の答えを聞かれるのもよくあること。


普通なら
「自分でやりなさい」
と言うべきところだが、クラスメイトを大切にする彼女は断れない。


「ごめんね、私これからちょっと行かなきゃいけないから。
後でいいかな…」

柔らかく、丁寧に断ると彼女は騒がしくなり出した教室を抜けた──
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