小さな青春
□*小さな青春*第4弾
194ページ/225ページ
第39話
□玲夜と義理の姉□
初芽高校に通う高校2年生の津川玲夜は、校内でどころかアイドルさえも顔負けの天性のイケメンで知られている。
知性的で穏やか、そしてオシャレな彼は当然学校の女子の人気者で、男子の友人も多い。
そんな彼も他人があまり知らない、複雑な事情を抱えている──
玲夜の両親が離婚したのは、玲夜が小学校2年生の時だった。
離婚の原因を彼は詳しく覚えてはいなかったが、酒とタバコに溺れる父親の姿と、美人な顔立ちにアザをつくった母親の顔は覚えていた。
父親に引き取られた彼が小学校3年生になるころにはもう“新しい”母親がいた。
“古い”母親は、父親と離婚して間もなく、病で亡くなったと聞いた。
“新しい”母親は優しい人だったが、父親はほぼ毎日、家には帰らなかった。
“新しい”母親には娘がいた。
彼の8歳も年上だった。
毎日忙しく働く母親の代わりと言えるほど活発で家庭的でオバサンっぽさのある姉だった。
中学生になるまでは毎日のように、その義理の姉と遊び、語り、笑った。
それも今となっては関係ない。
彼が中学3年生の時、父親は二度目の離婚をして逃亡し音信不通…
母親と娘は海外へ行ったらしい。
残された彼は、わずかな親戚たちから金銭を少しだけ貰って、一人暮しを始めたのだ。
文句も泣き言も言わずに、その生活が2年以上も経つ今は、生活に必要な物やお金は自分で得る事ができるようになった。
昔のことを脳裏に浮かべ、とてつもなく安い家賃のとてつもなくボロ臭いアパートの階段を昇り、玲夜は買ってきた野菜や食料品の重さを手に感じた──