小さな青春

□*小さな青春*第4弾
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第40話
□図書委員長の昼下がり物語□





「ありがとね〜♪
また買ってね〜♪♪」


玲夜の義理の姉・亜里華が、初芽校内の売店で、娘の玲亜を背負いながら笑顔を振り撒いていた。

一階の大食堂前の廊下の小さい売店には初芽校生の客が後を断たなかった。


かれこれ一週間が経ち、亜里華はすでに初芽校の人徳者になっていた。

生徒に近しい若さであり、いつも笑顔を絶やさぬ姿に癒され、休み時間も世間話をしにきた生徒に囲まれていた。


美月が玲夜から聞いた話では、ちゃんと理事長と校長に許可をとって趣味でやっているらしい。

娘の世話も売店でやっている。
娘の玲亜の方も人気で、亜里華が忙しいときには女生徒らが面倒を見たりするほどだった。



「あっ、れーくぅん!
凍矢くぅん!」


生徒たちが散ったあとで、玲夜と美月の姿を見つけた亜里華が売店から手を振った。

お辞儀を返すと、美月は玲夜に着いて亜里華の元へ行った。


「はい、れー君はお茶。
凍矢君はメロンパンねっ」


亜里華はやけに物覚えがよかった。
何百人もの生徒が、売店でいつも買うものを全て記憶していて、常連生徒が売店にくると何も言わずに望みの品を出すのだ。


「午後も授業ねぇ!
お疲れ様ぁ〜」


代金を払いメロンパンを受け取る美月にも笑顔を忘れない──

玲夜の姉という事もあり、美月も亜里華のことは気に入っている。
─テンションは、あまり好きではないが…─


「ん?」

自分を見つめる赤ん坊の玲亜を見つめ返す美月を、
奇妙なモノを見るような目で見返す玲亜を美月は、
さらに不思議そうな目で見つめ返した。
それは延々続いていた…



「れー君、今日はお夕飯なにが食べたいぃ?
ゆってくれれば、あたしが真心込めて作るからぁ!

あっ、木賀先生!いらっしゃいませぇ♪
ブラックコーヒーですよねぇ、どうぞぉ!
おつかれ様でぇす。

で、ね!れー君なに食べたいぃ?」

「なんでも」

「その“なんでも”が、イッチバン困るのよぉ」




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