小さな青春
□*小さな青春*第4弾
89ページ/225ページ
第36話
□愛お嬢様珍道中!!□
“世の中の人間は庶民と貴族に分けられる”
と、彼女は言った。
では、彼女自身はどちらなのだろうか?
自分は貴族だと振る舞いながら、今この瞬間汗を飛び散らせながら精一杯走る(スピードは明らかに遅いが)彼女は、貴族というよりも庶民なのではないだろうか?
「そこのバス、待ちなさーーい!!」
今まさにバス停を発車しようとしているバスに声を上げる行為など、庶民が読むベタな学園漫画くらいにしか出てこないであろう。
「待ちなさいったら!!
待てったら待ちなさい!
これは命令なんだからね!
かの有名なAIグループ社長の愛娘の私─藍沢愛の命令で……」
ンなもん知ったこっちゃねーよ。とでも言うように、バスは音を立てて発車した。
・
・
・
「…はぁっ…はあっ……あの運転手〜…!!
“金の力”でクビにしてやるんだから…!
覚えてなさい…!!」
30分おきのバスを逃した彼女は、不機嫌そうにそう言った。
バスに乗り遅れ、汗を流して膝に手を置き運転手への文句を垂れる光景は、ベタな学園漫画でも中々見れるものではない。
自分でも言っていたが、彼女の名前は
藍沢愛(あいざわ あい)
有名“らしい”AIグループ社長の愛娘“らしい”
薄紫色の髪に、ウサギの耳に見えなくもない白いリボンを着けた彼女は、外見的におそらく目立つ。
まぁ、そういう目立つ所と態度以外は、並以下の庶民と言わざるを得ない、そんな女の子である─
ちなみに、彼女自身には“金の力”などない!!