小さな青春
□*小さな青春*第5弾
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第47話
□梅雨□
「ねぇねぇ、メガネ割るとき、指で押し割る?
それとも叩き割る?」
「おいおい止してくれよ!?
それは僕の眼鏡なんだよ!?
“煎餅食べる時どうやって割る?”みたいな感じでおそろしいこと聞くのは止してくれ!!」
初芽高校2年3組教室─
自分の縁なし眼鏡を井坂に取られ、心配で仕方ない様子の“伊達眼鏡エロ助”居鳥(いとり)が言う。
意に介さぬ様子で居鳥のメガネをグニャ〜と曲げようとする井坂を、ぼんやり眺めて眠たげな未来が答えた。
「別に好き好みじゃん?
熱で溶かすもよし、凍らせて床に落とすもよし」
「なっるほど〜。
さっすが未来」
「こらこらぁ!
君君!君達!
メガネは便利な食材じゃないんだよ!
早く返したまえ!僕は…さっきから、全く周りが見えなくてだね…!!」
視力が極端に悪い居鳥は、メガネを取られたせいでさっきからフラついてあちこちぶつかっている。
「返してくれ!」
「やっだぁ」
「き、君ねぇ!
眼鏡は僕の体の一部なんだ!
頼むから返してくれ!!」
「んー、どっしよっかなー」
「いい加減にしたまえ!
これだからB型の女性は…」
「血液型カンケーないっしょ…」
居鳥の言葉にムッとした井坂は…
ピシッ
「げっ…!」
「な、何だい…何だい今の音は…!!」
「ゴっメ居鳥…マっジでそんなつもりは……」
「僕の眼鏡をどうしたぁ!!」
我を忘れた居鳥は、眼鏡がなくて視界が悪いにも関わらず“井坂っぽい”女子に飛び付いたものだから…
「ちょっと…あたしはっ…!いやぁっ」
未来は椅子ごと倒れて、井坂と間違えて未来に飛び掛かった裸眼居鳥は…
「あ…アイムソーリぃ…」
未来に覆い被さっていた。