小さな青春
□*小さな青春*第6弾
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第56話
□愛と勇気だけが友達□
「東に話があるってよ」
井坂のその言葉に、2年3組の教室中の目が集まった。
中でも、変態こと倉見が特に強い反応を示した。
「ゆ、ゆゆっ勇気にィ〜〜〜!?
女子がァ〜〜〜?!」
言葉にしながら、倉見はこの世の終わりのような顔をした。
当然だ。
女子にモテる男子が多いこのクラスにおいては、倉見にとって勇気は貴重な非モテ男なのである。
勇気に女の影が・・・
倉見にとってコレほどの絶望はない。
が・・・
「いやいやいや!
山本だろ!?学級委員会でまた不祥事を起こした勇気を、山本がいつものように叱りつけに来たに決まってる!
そうだ、そうに違いない!!」
倉見は、狂気染みた笑みを浮かべてそう言った。
そこまで必死なのも、それはそれでまたおかしい。
「いや、山本さんじゃないけどね」
呆れた表情の井坂が、堅く目を閉じて天に祈りを捧げている倉見に言う。
すると倉見は祈るのをやめ、更に絶望が深まったようにズーンと沈み込む。
「テメェ、あとで覚えとけよな───」
倉見を横目で睨み付けながら、勇気は教室の戸口に向かう。
いつもの、眉間にシワを寄せた表情は崩さぬまま・・・しかし、内心ドキドキしながら。
近づくにつれ、扉に隠れたその女子の姿が少しずつ見えてくる。
勇気のドキドキも、強まっていく。
倉見の絶望のカウントダウンも───
それにしても、何とも感受性豊かな男たちだ・・・
「東、あんたも中々隅に置けないじゃん」
すれ違い様に井坂が言ったその言葉に、勇気のドキドキはさらに強まった!!
クイッと眼鏡を上げた井坂は、今度は倉見に
「ドンマイ」
と告げた。
何で!?という反応を示した倉見は、とうとう勇気の肩越しに、その女子の姿を捉え、そして気絶した。
そしてまた勇気も、扉の前で立ち尽くしている。
クラス中の目が勇気と訪問者に注がれる中、勇気は対する相手と向き合って、硬直していた。
「お、オマエ・・・!!」
「こんにちは、東勇気くん」
勇気の体が震え出す。
だが、クラスを震撼させたのは───その女子の容姿だった。
『かわいい!!!』