小さな青春
□*小さな青春*第6弾
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第52話
□ストーカー通り魔と…□
「やべー…だるい……」
暗い夜空の下、フラつきながら津川玲夜は歩いていた。
今日は朝から体調がボロボロ(熱が38.5°)だった玲夜。
周りからは散々注意されたものの、根が真面目な彼はムリに授業を受け、結果…今こうして視界がぼやける程ヒドイ状態になっているのだ。
「…ハァ…やべ……意識飛びそ──」
吐く息は熱気を帯びて、一歩一歩の足取りが重く、今にも倒れ込みそうだ。
最近は、溜まった疲れでずっとこんな調子。
それでも、同居中だった義理の姉とその子どもがしばらく前から日本中の観光巡りの旅に出ているので、炊事洗濯全てやる生活に一時戻ってしまい……ツラくてもこうしてムリをしないといけない状態なのだ。
そして……彼に更に無理を強いる出来事が起きた─
「きゃーーっ!!」
突然聞こえた悲鳴はすぐ近くに違いない……
見回せば…目の前の公園の前で、茶色い髪の大人な女性が……
マスクとニット帽を被った黒服の男に、背後から口を塞がれ、抵抗する体を触れられて声にならない悲鳴を上げていた。
「おいおい…あれが話に聞いてたヤロウか…?」
熱のせいでぼやける視界とはっきりしない意識の中…玲夜は昼間に学校でぼんやりと耳にしていた“ストーカー通り魔”の事件を思い出していた。