日常

□『たたかい……』
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 ネムイ。

 俺が今受けている授業の感想はそれだけだった。
――それも毎回毎回。


 だか、俺は寝るわけにはいかないんだっ。


 何せこの授業の先生が作るテストは、授業を一部始終漏れなく聞いてないと点がとれないのだ。
先生が意地悪ため……。
そう、普通ならテストに出さないことを授業で一言いって平気でだすのだ。

 先生の授業はまさに、「重要語句で作られた子守歌」。
その名は授業を受けていない、後輩の元まで轟いている。

「ふぁ……」

 押さえきれなかった欠伸が、必死に閉じようとした口からこぼれでた。

 ま、まずいぞっ。

 俺は頬をつねり眠気と戦いながら必死に先生の解説に耳を傾ける。
頬が赤くなったが仕方ない。

 生き残るための代償だっ。

 心を入れ替え背筋を伸ばし先生の口元を見つめる。

 だが、先生の響きの良い低い声が、のんびりと間延びした声が、俺の眠気を誘う。

 まぶたがエレベーターの扉のようにゆっくりと閉じようとする。
その先では、一人、また一人とクラスメートが先生の子守歌の餌食となり、夢ノ世界へ。

 俺は寝るもんかっ。絶対にっ!!

 クラスメートの犠牲を見て、意識を取り戻し、俺はいつの間にやら曲がった背筋を伸ばす。
頬についた爪の後は、なかなか治らないだろう。

 テメーらの分まで授業受けてやるぜっ。

 高らかに胸の中(・・・)で宣言し、俺はベンを回す。回す。回す。まわ……


 ……あっ!!

 首が船をこいだ。ベンを回していた途中で意識が逃げたらしい。

 まずいぞ……。

 寝そうになっていた間の時も当然進んでいる。

 カッ……カッ……カッ……

 ふと、見ると、解説を終えた先生が、ゆっくりとしたリズムで黒板に文字を書いていた。

 書くぞっ。書いてやるぜっ!!

 その文字をノートに写すことにより、眠気を忘れる作戦を、俺は始める。
しかし、先生の書くペースは遅く、すぐに手を止められ、作戦が続かない。
よって、眠気はますます俺の中で大きくなる。

 スーゥスーゥ

 隣の奴がいびきをかき始めた。

 止めてくれ……。

 その音が俺を誘惑する。寝てしまえ、楽になるぞっ。と。

 俺は首を振ってそれを振り払おうとした。
が、払っても払ってもいびきは続いている。
意味がない……。

 後で一発お見舞いしてやる。

「教科書の……百六ページを見てください……」

 やっと黒板を書き終えた先生が、再びゆっくりゆっくりと教科書を読み始める。

 眠らないようにて開けた窓から、程よい暖かさの風がふき、俺の頬をなでる。

 しまった。逆効果だったが……。

 外はひなたぼっこがしたくなる陽気だ。

 先生の解説(子守歌)が耳に頭に響く。

 押さえきれずあくびが大きな口から溢れ出す。


 もう……だめだ……。

 俺は今日も眠気に負けた。


 ――教室の時計は授業始まってから15分の位置を指していた。

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