恋愛
□『支え合っていこう』
2ページ/5ページ
「ごちそうさま」
その日の夕食は食べたなんでとても言えない量しか喉を通らなかった。
「えっ、もういらないの?」
「うん。食べたい気分じゃない」
「具合でも悪いの? それとも学校でなにかあった」
……。
図星をつかれたあかりは、口を開き閉じた。
そして、その動作を隠すために首を横にふる。
「なんでもない」
そう言ってあかりは台所を跳び出て自分の部屋に駆け込んだ。
お母さんに言えるわけがないよ。
お母さんはお父さんと離婚してから男嫌いになった。
そんな人に恋愛相談できる訳がないし、下手したらケンタ付き合ってることを怒られるかもしれない。
ケンタ……
あかりはベットに倒れ込んだ。
と、木の上と鉄がこすり合わさる音がする。
――携帯のバイブだ。
開くと、メールが一件届いていた。宛名はケンタ。
『明日の十一時に羽田空港の改札をくぐる。』
ただそれだけ書いてあった。その素っ気な
さがあかりのなにかに触れた。
「だから何よっ。今までひとりで決めてきたんだから、行くの一人で行きなよっ」
強がりだ。本当は来てくれと言われたかった。
あかりの目から涙がこぼれる。
ケンタは最後の最後まで、あかりに相談したり、あかりに頼んだりしなかった。ただ、あかりに気を使っただけ。
「支え合っていこうって約束したのに……」
――私はケンタを支えられる存在じゃなかった。気を使わせる存在だった。
空港には行けない……。
それが何を意味するかはあかりは理解している。
理解した上の決断だ。
さよなら、ケンタ。
★