Maine
□entrance
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不機嫌な雲を上空に並べた街。聞こえるのは時折吹く風と、さぁーっという雨の音だけ。
辺りはこんな天気だからか人通りも少なく、やけに静かだ。
少し用事があって、俺はこの街を訪れている。それはほんのささいな用事だった。
その用事も済み、今は帰ろうと教団に向かおうとしている所だ。
このまま真っ直ぐ戻ればいいはずなのに、初めて来る街並みに好奇心がうずく・・・。
なんせこの街は路地が多い。それぞれ一体、何処へ向かう道なのかは良く分からないが。
好奇心とともに冒険心までうずいて、俺は路地に入っていくつか角を曲がってみた。
誰もいない細い一本道を、灰色の空を見上げながら歩く。
それは俺にとって、ささいな寄り道のはずだった。
少しくらい遅くなったって大丈夫だろう。俺はそう、思っていた。