Maine
□entrance
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きらめく街中に、仲間とはぐれた子兎が一匹。
孤独も、寒さでさえも忘れ、ただ輝く街の明かりを眺めていた。
きれいなその光に見とれながら、そろそろ自分が居るべき場所へ帰らなくてはとぼんやり考える。
子兎は、自分でも薄々わかっていた。
己の中で、帰らなくてはいけない場所と帰りたい場所は違うのだということを。
そう思えば、自分に帰る場所なんてないのかもしれないということも―――
「The sugary snow」
「はぁぁ…」
頬に冷たい風を感じながらラビは両手に息を吐きかけた。
赤いマフラーに顔を半分埋めて、少しでも温めようと両手をこすり合わせる。
季節は寒空が広がる12月。
この時期になると、街はクリスマス模様一色に染まり、ほとんどの店や民家はきらびやかなイルミネーションや飾りで色付けされる。
こういう光景を見ると、いくつになっても明るい気分になるものだ。