Maine 2
□Night to a nightmare
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どうしてあんな夢を見たんだろう。
とても暗く重く、怖い夢だった。
現実にはなって欲しくない内容だった。
――――――……でも、もしかすると
あれは夢≠ネんかじゃなくて
今現実≠セと信じている方が、夢≠ネのかもしれない――――――
「Night to a nightmare」
……何かの焼け焦げた匂い。体の横をすり抜けてゆく冷たい風。
彼がゆっくりと目を開けると、酷い光景が広がっていた。
ぼろぼろに崩れかけたたくさんの建物。燃え盛る民家……。
道端には、人が何人も倒れている。が、全く動かない所を見るときっともう息は無いのだろう。その骸も、ぼろきれのような有り様だった。
『……なんで、こんなことに……』
この場所で、一体何があったのだろう。
そして、自分はこんな場所で何をしていたのだろう。
記憶を巡らせようとするが、まるで霧がかかったかのように何も思い出せない。
『俺は………――――――』
彼が呆然とその場に立ち尽くしていると、少し遠くで地響きのような大きな音が聞こえた。
もしかすると、これは戦争なのだろうか。
だとしたら、今すぐこの場から離れた方が良いだろう。だが……。
『音のする方へ行けば、何か分かるかもしれない――――――』
漠然とそんな気がして、彼は聞こえてくる音の方へと走った。
景色は少しばかり変わっても、街が崩壊状態にあると思わせる残骸や瓦礫(がれき)の山はいくら進んでも目に入ってきた。
鮮明な光景なのに、それに耐えることが出来ている自分が不思議だ。
まるで、このようなことにはもう慣れているかのような……自分にはもともと感情≠ニいうものが無かったかのような、そんな気さえするのだ。