Maine 2
□「Christmas present」
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「例えば……、…なんかクリスマスっぽい歌を歌うとか!」
「そういう歌を知らないし、……第一歌ってどうする」
「うぐっ……、…ツリーと部屋を飾り付ける!」
「うちに、ツリーも飾る道具も何も無い。それに今日一日の為だけにそれするのもなぁ」
「ね、寝る時に、枕元に靴下を置いておくとか!」
「それはイブの内にやるんだろ?サンタはもうプレゼントを配り終えた後だよ」
思いつきで言ってみた事をティキに次々却下され、ラビはズーンと肩を落とした。
少し可哀そうになったティキは、身を起こしてフォローするように言った。
「……まあ、いつもよりもちょっと豪華で美味い料理を食べる、っていうのなら今からでも実現は可能かもな」
途端に顔を輝かせて、明るい声でラビは言う。
「そうか!その手があったさ!」
何かを思いついたように手を打つと、早速…というようにティキの肩を叩いて続けた。
「じゃあさ!今から料理の材料買いに行こう!もちろんティキも一緒にさ!」
「ええっ!って、何作るのか決めるのが先だろ……。先に材料買ってどうする」
「ん〜……、じゃあフルーツサラダとポタージュスープ、それと七面鳥の丸焼き。あと、シャンパンとケーキも。もちろん上等なやつをティキのおごりで!」
にっこりと満面の笑みを浮かべるラビの反面、ティキは「はいはい……」と深いため息をついた。
「……そうと決まれば早く行くぞ。料理をするのが遅くなる」
ティキは諦めた様子で、コート掛けに掛かっていた黒いコートを手に取る。それから一緒に掛けてあった白いコートをつかみ、ラビに投げ渡した。
「あっ、ありがと」
「外、すげー寒そうだからちゃんとマフラーもして出ろよ?」
「うん……。分かったさ……」
彼がラビに優しい言葉をかけてくれるのは、いつものことだった。けれど……、今日はなんだかその優しさに、何かモヤモヤとした何とも言い難い違和感を感じた。
『……なんだ……この感じ……』
「ラビ?どうした、行くぞ」
部屋から出ようとしたティキが、振り向いてそう声をかけてくる。
「あっ、待って!」
ラビは急いで首に赤いマフラーを巻きつけると、急いでティキを追いかけた。