Maine 2
□chapter4
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真っ暗な部屋の中、ただぼんやりと、窓から差し込む月明かりを眺めていた。
太陽程ではないが、雨上がりの月は十分に部屋を見渡せるくらいに明るく、優しい光で街を照らしている。
何故だか俺には、昼間の晴れ晴れとした日光よりも、こっちの柔らかい月光の方が落ち着くような気がした。
快晴の日より、曇りの日の方が好きだしな……――――――
床に座り、ベッドに寄しかかってタバコをふかしながら俺は何気なく思う。
別に、明るいのが嫌いとか苦手という訳じゃない。
だけど、少し薄暗い場所―――時間帯では夜の方が何となく居心地がいいのだ。
最も、行動する時にそんなことを言っていては怒られるだろうが……。
……しかし、初めて彼の姿を目にしたときは驚いたな……――――――
世の中には、こんなに明るい髪色を持つ奴も居るもんなのかと。
きっと俺が知らないだけで、他にも同じような人間はいるんだろうが。
「今までこんなに綺麗な赤い髪、見たことなかったからな……」
俺は、すぐ後ろで寝息を立てている青年の髪をそっと撫でる。
色々な疲労のせいか、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
今頃教団の奴らは困惑しているかもしれないな。
話を聞けば、誰にも何一つ言わず窓から抜け出て来たらしいし。
「帰って何言われても知らねぇぞー……」
呟きながら俺はふと青年の方を見やった。
……幸せそうな顔をして眠る姿に思わず頬が緩む。
幼さが残るその表情は、青年がまだただの子供だということを強く印象付けた。
本当ならまだ、自由に暮らしていて良い年齢のはずなのに。
彼が生きているこの世界が、そうさせなかった。
平凡な日常から一転、この世の現実を突き付けられ、自らも醜い争いに巻き込まれる羽目になって……。
「…………」
どうしてだろう。世界を変えてみたいと思った。
こいつが傷つく世の中なんて、無くていい。
もしも、こんな争いや悲しみをなくせるのだとしたら。
……出来たら、俺だって苦労しない。
今の俺には、ただ自分に従うことしか……。