Maine 2

□chapter4
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「ふっ……、何考えてんだか」



苦々しく笑うと、髪を撫でていた手をそっと離す。と……、



「ん………、なんで止めるんさ………?」



重たそうな瞼をゆっくりと開いて。半分寝ぼけたような声で青年が呟いた。



「……なんだ、起きてたのか」



俺が言うと、青年は眠たそうにうなった。



どうやら「そうだ」と言いたいらしい。



「眠いんなら、無理して話しかけなくていいぞ。もう少し寝てろ」



「……だって……頭……」



未練がましく呟く青年を見て、俺はああと思いつく。



「何だ、頭撫でるの止めないで欲しかったのか?」



「……ん……」



どうやらそうらしい反応を青年は見せる。



仕方ないなと呟き、俺は青年の望み通り再びその赤い髪に触れる。



すると青年は、心地良さそうに微笑みながら目を閉じた。



なんだか、まるで小動物のようだ――――――



「……お前に撫でられると、……なんか落ち着くさ……」



その嬉しそうな声に、静かに笑いながら俺は言う。



「お前って、ほんと子供っぽいよな。俺は母親じゃないんだぞ」



「別にいいだろ?……迷惑か……?」



途端に不安そうな眼差しで、青年は俺を見上げる。



俺が嫌々やっているとでも思ったのだろうか。



「そんなことないから安心しろ。……お前がして欲しいようにするから」



言った後で、最後のはちょっと言い過ぎたと後悔した。



案の定、彼がくすくすとおかしそうに笑う。



「なんか、お前が俺の執事にでもなったみたいさ……」



「はいはい。執事でも召使いでも、好きに言って笑ってろ」



ため息交じりに苦笑してから、俺は青年の左頬にそっと口付けて言う。



「……でも、今はとりあえず眠っておけ。目が半分寝てるぞ」



「ん……、んぅ………」



口を開くのも億劫になったのか、青年は小さくうなって微かにうなずく。



そして頑張って開けていた眼を再び閉ざした。



「その代わり、……朝になったらちゃんと帰るんだぞ。いいな?」



その言葉にも小さくうなる声が聞こえ、すぐに静かな寝息へと変わる。



「……お休みな。青年」



ふっと微笑んで、眠る横顔にそっと囁く。



眠ってはいるだろうが、しばらくは頭を撫でていてやろうと思う。



こう考える自分になんだか笑えてくる。



まるで、本当に青年の親にでもなったみたいだ。



……いや、子供の面倒を見るなんてことはやっぱりごめんだが……。



でも。それでも……青年の寝顔を愛おしいと感じる自分がいる。



初めて感じる気持ちに、俺は嬉しい反面胸が締め付けられる。



その複雑な感情は、やんわりと地を照らす月明かりと少し似ているような、……そんな気がした。



「……俺は」      ……そして青年は……。



――― 一体、何を望んでいるのだろう ―――

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