Maine 2

□本心
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「……いいなぁ、金持ちって……」



聞いた所によると、彼らノアの一族は皆貴族の一員らしい。



だからこんな良い部屋を借りられるのかもしれない。



……教団の、足の踏み場もない自室を思い浮かべて思わずため息が出た。



「……そろそろ片付けなきゃかもなぁ」



頬ずえをついて一人呟く。



と、何か物音が聞こえた。



この部屋ではなく、別の場所から聞こえてくる。



「………?」



彼、だろうか。



「まさか泥棒……、な訳ないよな」



自分自身につっこんで、立ち上がる。



部屋の戸に近づいて耳を澄ますと、どうやら廊下から聞こえてきているようだ。



「…………」



俺はドアノブをそっと掴むと、ゆっくりとドアを開ける。



ギィ――――――



「え?」



「っ………!!」



……すぐ目の前に、彼が立っていた。



自分が開ける前にドアが開いたことに驚いたのか、間の抜けた声で言う。



「なんだ、ラビか。……びっくりした」



「……居たのか」



不思議そうに瞬きした後で、彼―――ティキ・ミックは苦笑した。



ティキが部屋に居たことに、嬉しいけれど照れくさくてついそっけない言葉が出てしまう。



「ついさっき仕事から帰ってきたとこ。ラビが来てたのには気づかなかった」



今日はオールバックにしてある前髪をかきあげながらティキは言った。



「……そうか。………、お」



「………?」



一言だけ呟くと、ティキはまた不思議そうに目を瞬いた。



「……お帰りさ///



恥ずかしくてティキからは視線を逸らしながら、俺はそれだけ告げる。



「…………」



……気まずい沈黙。



その後で。



「ただいま」



笑みの含まれた、優しい声が返ってきた。



見上げると、ティキは嬉しそうににっこり笑っていた。



その表情に、思わずドキリとする。



カァッと頬が熱くなるのが分かった。



「なんか、新婚生活みたいだな」



「ッ!へ、変なこと言うなよ……っ!///



俺がつい言い返すと、ティキは面白そうに笑って俺の頭を撫でた。

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