Maine 2
□本心
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「はは。ラビって、結構照れ屋なんだな」
「…………」
俺は何も言わず、ただ黙って彼の温もりに目を細める。
ティキに頭を撫でられると、気持ちが和らぐ。
他の誰でもなく、ティキにこうされるのは……好きだ。
ずっと、こうしていて欲しいくらい―――
「そうだ。ラビ、もう晩飯食ったか?」
「……いや、まだだけど……」
突然の質問に、ティキを見上げながら答える。
「なら、今から一緒に外に食べに行かないか?せっかく来たんだからさ」
変わらずやわらかい微笑みを浮かべたままティキが提案してくる。
穏やかな表情、というだけでは、彼の本心を見抜くのは難しそうだ。
誰にでも紳士的で優しくて、人と接するのが得意そう……というのは見ていて分かる。
だが彼の場合、他人と接するというのは一種の仕事みたいなものだ。……だから、今のこの笑顔も他の奴に見せるのと同じ、営業スマイルというものかもしれない……。
なんて事を考えていると、ティキが心配そうに顔を覗き込んできた。
「……どうした?具合でも悪いか?」
「え、いや……何でもないさ……」
「そうか?」
まだ少し怪訝そうにしていたが、俺の答えに軽くうなずいた。
「……まぁ、お前がおごってくれるって言うなら、一緒に行ってやってもいいけど」
少し迷ったが、俺はわざとぶっきらぼうにそう答えた。
「条件付きか。いいぞ、今日は俺のおごりで」
苦笑して言った後で、「ただし」とティキは続けた。
口元が妖しく微笑む。
「俺からも、一つ条件を付けていいか?」
「……、……何さ」
あまりいい予感はしない。
それどころか、逆に嫌な予感しかしない……。
「……今夜はここに泊まること。それが嫌ならおごらない」
「……っ///」
にっこりと微笑むティキを目前に、俺はやっぱりかと思う。
……なんとなくだが、そう言われる予感がしていた。