Maine 2
□ 「Valentine's Day Is Give You」
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―――しばらくして戻ってきたラビは、何故かとても不満そうな顔をしていた。
「おかえり。なんか面白いもんでも見つけたか?」
「……何さ、アレ」
ラビは俺の問いに答えず、鋭いまなざしを俺に向けて言った。
「何って、俺が色々な女子からもらったチョコレート―――」
「そんなことを聞いてるんじゃないさっ!!」
突然ラビが大きな声で言った。
そのまま、つかつかと俺に歩み寄ると疑うように目を見つめられる。
「本当にアレ、全部女の子からもらったんさ……?!」
「そうだけど?……何が言いたいんだ?」
「お前、冷蔵庫から溢れんばかりのチョコレートを、毎年もらってるんさ!?」
興奮しているラビを静めつつ訳を聞いてみると、冷蔵庫を開けた途端、中からたくさんのチョコレートの包みがバラバラと出てきたのだという。
「あー……、まあ確かに、全部あそこに入れるのは大変だったような記憶があるけど……」
「…………」
ラビは怒ったような拗ねた様な顔で黙ってうつむいている。
俺はその様子が気になって聞く。
「ラビ、なんでそんな顔してるんだ?」
「………、別に」
顔を覗き込もうとすると、すぐにそっぽを向かれた。
一体、どうしてこんなにもラビが不服そうなのかよく分からなかった。
だが、俺は思いつきでラビに問うてみる。
「……もしかして、ヤキモチ焼いてんのか?」
「…………///」
その赤くなった表情で、理由がよく分かった。
ラビは、俺が女にたくさんチョコレートをもらったから不満になったわけではなくて、多分自分よりもその女達の方が優先順位が先だろうと思ったからなのかもしれない。
もしかしたら、男の自分よりも周りの女達の方が大切だと俺が思っている、などと疑っているのだろうか。
……なんて、少し深読みしすぎかもしれないけど。
俺は自分の考えにくすりと笑うと、ラビの頭をそっと撫でて言う。
「俺がラビに黙って女と付き合うと思うか?」
「…………」
何も言わずうつむいたままのラビに微笑みかけて俺は続ける。
「心配すんな。俺は当分女と付き合う気なんかない。第一、それならラビと一緒にいた方がずっと良いし」
「……、なんでさ……?」
やっと反応を示したラビに俺は苦笑しながら答える。
「さあな。そんなのラビだって分かってるんじゃないのか?」
「…………///」
ラビは頬を赤く染めて黙り込んだ後、俺を見上げて言った。
「……そう思う根拠は何さ」
「根拠?うーん……」
俺は少しの間考えてから、自分の確かな答えにうなずいてラビに伝えた。
「今日チョコをもらったどの女よりも、ラビがチョコをくれた時が一番嬉しかったから、かな?」
「ッッ……!///」
その言葉に、すぐラビの顔が真っ赤に染まった。
「な……やっ……その……っ、……ほんとさ……?///」
ドギマギしながらラビがチラリと俺を見る。
その様子に思わず笑いながら素直に俺はうなずく。
「……そう……か」
ラビは何処かホッとしたように呟いた。
嬉しそうな微笑みを顔に浮かべて。
「にしても、ほんとにラビは可愛いな」
ついその頭を撫でると、怒ったようにラビは俺を見上げた。
「っ、……男に“可愛い”はないだろ」
「いいだろ、可愛いんだから」
「……はぁ、もういいさ」
ラビは諦めたようにため息をつくと、そっと俺に抱きついてきた。
おっ、と思いながら俺はその体を抱きしめる。
「……ティキ」
「ん?」
「………大好きさ………///」
小さく呟かれた言葉に一瞬驚いてから、俺はうなずく代わりにラビをギュッと抱きしめた。
嬉しくて、思わず顔がほころぶ。
どんなに甘いチョコレートよりも、その言葉の方が俺の心に甘く響いた。
俺はどうやら、バレンタインデーをなめていたようだ。
最初はどうでもいい日だと思っていた。
でも今は、この日を作った人間に感謝したい。
今日という日は、それほど自分にとって最高な日になったから――――――
❤Fin❤
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