Maine 2
□Poker Face
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「何言ってんだよ。可愛いラビにそんなことする訳ないだろ。正真正銘の勝負さ」
ティキの言葉に、ラビは顔をしかめる。可愛いと言われて不快なのか、それとも一種の照れ隠しだろうか。
やがて深いため息をつくと、了承の意でうなずいた。
「……分かったよ、付き合ってやる。ただし一回だけさ。負けてもやり直しは効かないぞ」
「俺が負けた時は、いさぎよく認めるさ。でも―――」
そこで一旦言葉を切ると、ティキはラビの眼を真っ直ぐ見つめて続けた。
「……もしラビが負けたら、その時は覚悟しろよ……?」
「は……?どういうことさっ」
意味深な発言に思わず問いかける。するとティキは、いつものように薄ら笑いを浮かべながら言った。
「これは最早れっきとした賭け事だからな。負けたらそれなりの代償を払うことになる」
「なっ……、代償って!そんなもの、払える訳ないだろ!?」
「心配するな。代償と言っても簡単なものだ。ラビが負けたら、俺は自分が欲しいものをお前からもらう。俺が負ければもちろんその逆だ。……どうする?」
挑戦的な一言に、ラビは唇を噛み締めて黙り込んだ。
勝負に乗るべきか否か迷っている様子だ。
そんなラビのことを面白むようにティキが見つめる。
数秒の間、部屋の中は静まり返っていた。
「―――やるよ。やってやるさ」
ラビは決意したように、力強い声でそう告げた。
直後、ティキはまるでそれを待っていたかのように笑みを浮かべた。
「……ふっ、そう言うと思ってた。で、ラビは何が欲しいんだ?」
たずねると、ラビはにやりと笑って答えた。
「焼肉一年分、俺が勝ったらおごってもらうさ」
「ほんと好きだな。ま、せいぜい頑張るといい」
「悪いけど負ける気なんかないさ。ついでに、肉は一番上等なやつな」
気の早いラビに、ティキは苦笑しながら「はいはい」とうなずく。
それから、先程ラビが揃えたトランプの山に手を伸ばし、シャッフルし始めた。
その手捌(さば)きは慣れていて、鮮やかなものだ。