Maine 2
□sweet kiss
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聖バレンタイン記念日。
毎年2月14日に、皆それぞれ愛する人へチョコレートや贈り物を渡す習慣だ。
この祝日には多数の説が存在するが、一口に「恋人の日」と言って間違いはないだろう。
ラビもまた、その習慣に従ってこの部屋を訪れたのだ。
あいにく、部屋には誰も居なかったのだが……。
「ったく……、こんな日まで仕事かよ」
俺と仕事、どっちが大切なんさ―――なんてことを呟きながら、ラビはベッドにぼふっと寝転がった。
そして、手に持ったままの包みを顔の上に掲げる。
「……あいつ、……喜んでくれるかな……」
去年のバレンタインにチョコを渡した時、とても嬉しそうに笑っていたのを思い出して顔がほころぶ。
照れ隠しでいつも素っ気ない態度を取ってしまうラビだが、本当はこの日をずっと楽しみにしていたのだ。
何と言っても、彼が喜んでくれるのは嬉しい。
相手にはこの気持ちが伝わっているのか、良く分からないけれど、本気でそう思う。
『……早く……帰ってこないかな……』
彼の笑顔を想像している内に、まぶたが重くなってきた。
心が幸せ≠ニいう感情で溢れていて温かい。
まどろむ心地よさを感じながら、ラビはいつしか深い眠りに堕ちていった……。