Maine 2
□プロローグ
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どちらかと言えば、いつもティキの方からラビにちょっかいを出すことが多いのに、今日は珍しい。
だが、別にティキは不審になど思わなかった。
逆に、ラビがやっと自分に少し心を開いてくれたのだと嬉しくなったほどだ。
「逢いたくて仕方なかったから、……来ちゃったんさ」
「……そうか。俺も、ラビが来てくれて嬉しいよ」
ティキの言葉にラビが顔を上げる。
「ほんとか……?」
少し首をかしげて問うラビに、ティキは笑ってうなずいた。
「……そうか……」
ラビは呟くと、再びティキの肩へ顔をうずめた。
こんな風に体を寄せ合っていると、辛いこと……悲しいこと、全てが癒されていくような安心感に包まれる。
温かくて、すごく幸せで……、出来ればずっとこうしていたいとラビは思った。
だからなのかは分からないが、唐突にひどい眠気に襲われた。
「……ティキぃ……」
弱々しい声で彼の名を呟いたラビは、そのまま眠るように意識を失った。
「ん?……おいラビ、どうし―――」
ティキが問いかける前にラビの身体から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。
その体を何とか抱き留め、驚いたティキはラビに声をかける。
「おい……!ラビ、大丈夫か!?しっかりしろ……!」
ラビはティキに答えることなく、ただ荒い呼吸を繰り返していた。
ティキはラビの額に手を当てると、悔しそうに舌打ちして呟く。
「……熱がある。結構高そうだな……」
苦しげに息をしながらも、今のラビは深く眠っているようだ。
こんな状態なのに、どうして気付いてやれなかったんだ……――――――
苦々しく思いながら、ティキはそっとラビの身体を抱き上げた。
そのまま、部屋のベットにゆっくりとラビの身体を寝かせる。
毛布を掛けてやると、眠る横顔を見つめながら小さく話しかけた。
「待ってろよラビ、すぐに楽にしてやるからな」
赤い髪をさらりと撫でてから、ティキは少し唇を噛み締めて静かに部屋を出ていこうとドアノブに手を伸ばした。
すると、後ろで小さく何かを呟く声がしてすぐに振り向く。
どうやらラビが、寝ぼけてティキの名を呼んでいるらしかった。
「…………」
ティキは少しの間、心配そうにラビを見つめてから、音を立てないようそっと部屋を後にした。
To Be Continue……
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