Maine 2

□story 3
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「今度は、お前の方が風邪引いちゃうぞ」



小さな声で呟いて、ラビは柔らかい微笑みを浮かべた。



しばらくその寝姿を眺めていると、数分ほど経ってから小さくうなる声が聞こえた。



「ん……ぅん……」



ティキはまだ眠そうに思い瞼を開いて身を起こした。



そして、ぼんやりとした様子で目をこする。



「おはようさ」



ラビは笑いながら、半分夢を見ているようなティキに声をかけた。



「んん……?」



訳が分からなそうにうなると、ティキはやっとラビの方へ視線を向けた。



「……あれ、ラビ。……なんだ、もう起きてたのか……」



眠そうな声で言い、ふわああとあくびを零すティキ。



そんな彼を見て、ラビはなお面白そうに笑った。



「……何笑ってんだ……?」



ティキが訝しげにラビを見る。するとラビは笑いながら答えた。



「いや、ティキの寝起き姿って初めて見るなぁと思って」



「……あーそう。そんなに俺の眠そうな顔は面白いか」



少し不満そうに言い、ティキはベットに頬杖をついた。



その様子を見て、何かに気が付いたようにラビは問う。



「……もしかして、ちゃんと眠れなかったのか?」



「もしかしなくてもそうだけど。2、3時間しか眠れてねぇよ」



今度は明らかに不服そうな声が返って来る。



途端に、ラビは押し黙ってうつむいた。



「……俺のせい、だよな……」



少ししてから、反省したようなラビの声が聞こえてきた。



「別に、お前のせいだなんて言ってないだろ」



そう言いながらも、ティキはぷいとラビから顔を逸らしている。



「でも、……迷惑だって、思ってんだろ……?……ほんと、ごめん」



ラビはちゃんとティキの方へ身体を向け、それでも目は伏せたままで謝った。



それから、付け加えるように言葉を続ける。



「……俺、もう絶対にお前に嫌な思いさせたりしないさ。……もし、ティキが望むんなら、もうここにだって来ないようにするし……、だから……」



傍から聞いていても分かるほどに苦しげなラビの声は、彼の口付けによって途中で遮られた。



「んんっ………」



驚いて咄嗟に逃れようとするが、片腕で身体を抱きしめられてしまい、身動きできなくなる。



突然のことに困惑していると、口の中にティキの舌が侵入してきた。



室内には、二人が漏らす微かな声と、唇と舌の絡み合う濡れた音だけが響いている。



「ん……あっ……はっ……」



激しくも甘いそのキスに、ラビの頬は薄赤く染まっていく。



いつしかその手はしっかりとティキの背中に回されていた。



少しの間そうしていた後、やっとのことでティキがラビを解放した。



「はぁ……っ」



熱っぽいため息をつくラビに、ティキは静かに言った。



「ラビには、俺がそんな風に思ってるように見えるのか?」



いきなりの問いに、ラビは不思議そうに首を傾げて聞き返す。



「そんな風に、って……?」



「さっき言ってただろ。迷惑≠セとか、嫌≠セとか。ラビには、俺が本当にそう思ってるように見えるか?」



もう一度はっきりと聞かれ、ラビは困ったようにうつむいた。



そして、少し迷った後で小さく答えた。



「……見えない、とは言えないさ……」



ティキはそっとため息をついて会話を続ける。



「ま、そりゃそうだろうけどな。確かに、周りからはそう見えるかもしれない」



でも、とそこでいつものように人の良い笑みを浮かべてティキは言った。



「俺は、ラビのことをそんな風になんか思ってない。昨日も言ったけど、ラビは病気で苦しいのに一生懸命に頑張ってるだろ。そんなお前を見て、迷惑だとか面倒だって思う奴はいないはずだ。もちろん、俺もな」



くしゃりと優しくラビの頭を撫で、ティキはにっこり微笑んだ。



「ラビの良い所は、優しくて人を気遣うことが出来る所だけど、少し他人に気を遣い過ぎてもいる。だから、もう少し肩の力を抜いて生きていてもいいと思うぞ」



「…………」



ティキに指摘され、ラビは改めて自分のことを見直してみた。

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