Maine 2
□闇夜のまにまに
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――――――俺は一体、何をやっているんだ――――――
夜の暗い部屋の中、息を弾ませながらぼんやりと彼は思う。
今は自分一人だけのこの空間で、せわしなく呼吸する音だけがやたら大きく聞こえた。
闇に慣れた眼は、何を思うでもなく真っ直ぐ前を見つめている。
――――――なんでこんなことを俺は……――――――
彼は、自分でも何をどうしたいのか分からなくなっていた。
感情に任せ、ただ思うまま、体が動くままに行動するだけで。
「………ティキ………」
頭の中で、優しげな微笑を浮かべる男の顔がチラついた。
「闇夜のまにまに」
「………っ、なんで眠れないんさ……!」
真っ暗な一室のベッドの上で、ラビは苛立たしげに呟いた。
いつみならもうとっくに寝入っているはずなのに、今日に限って何故か眠れない。
ベッドに寝転がってから、一時間は経過しただろう。
その間に苛々はどんどん募り、ついに最高潮にまで達していた。
「あ゛ーっもう!今日はパンダ≠煖盾ネくて、いつもより静かに寝れると思ったのに」
十分安らかに眠れる条件なのに、自分自身が一向に眠くならないのでは意味が無い。
いっそのこと、このまま朝まで起きていようか……。
深くため息をつき、しょうがないと諦めそうになった、のだが。
「………んん………?」 不意にラビの頭の中を、ある光景がよぎった。
見上げる自分の手前には、不敵に微笑む黒髪の男の顔。
『気持ち良いか?ラビ』
「なっ……!」
脳裏に響いたその声に、ラビは顔を赤くして飛び起きた。
「なんでアイツが出てくるんさっ!つーか、なんであの時の光景なんさ!」
自分の頭をガシガシ叩きながら困惑した声で呟く。
それでもまだ脳はフラッシュバックを止めない。
『ここか?ほんとに好きだな、ラビは。毎回ここいじるとイイ声出すし』