Maine 2
□sweet wine
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酒は百薬の長≠ニいうことわざがある。
酒はどんな薬にも勝る最良の薬、という意味だ。
……だが、もう一つ。
酒は飲んでも呑まれるな≠ニいうことわざもある。
気分を良くさせる薬になるか
状況を一転させる原動力になるか
どちらになるかは その時の自分次第である。
「sweet wine」
「ラビは酒って飲めるのか?」
ランプの灯りがぼんやりと灯る薄暗い夜の部屋。
夕食を済ませて、ゆっくりとくつろいでいる時だった。
「……何さいきなり」
唐突な問いかけに、ラビは読んでいた本から上げた顔を訝しげにしかめた。
今この時まで会話の中で酒の話題など全くなかった故に、その問いはなお異色を発していた。
「いや、とある知人からワインを何本かもらったんだ。今が丁度飲み頃らしいんだけど、俺一人で飲み切れる量じゃなくてな」
優雅な微笑を浮かべながら事情を説明した後で、彼は改めて続けた。
「で、もしラビが飲めるんなら少し手伝ってもらおうと思ってさ。無理に、とは言わないけど」
「飲めるさ。ワインの1本や2本くらい普通にな」
ラビは率直にそう話すと、今度は逆に問い返した。
「ティキだって飲めるだろ?……一体何本もらったんさ……?」
「えーと……、確か20本くらいだったかな」
「えっ、そんなに……!?どんな知り合いだよ……」
ただのワイン愛好家だよ、と苦笑しながらティキは肩をすくめた。
それが本当の事なのだろうが、きっと相当好かれているに違いない。
ティキが色々と周りからちやほやされるのを見て、「美形って得だなぁ……」とラビは何度も思わされた程だ。
そんなティキがうらやましい反面、少し子供のように拗ねたくなる。