Maine 2
□sweet wine
2ページ/11ページ
自分の好きな人だと自覚しているからこそ、他人に好かれるのを見ると不満になるのだ。
「……まあ、そういうことなら手伝ってやっても良いさ」
「助かるよ。ちょっと待ってろ、今持ってくる」
わざと上から目線な物言いをするラビに笑いかけ、ティキは一人部屋を出て行った。
中断していた読書を再開していると、程なくしてワインとグラスを二人分ずつ持って戻って来た。
「お待たせ。とりあえず二本持ってきた」
「……へぇ、結構年代物だな。……値段も高そうさ」
本にしおりを挟みワインを眺めて言った後で、ラビはティキを見上げて聞いた。
「……こんな良さそうなモン、俺なんかが飲んじゃって良いんさ?」
「良いに決まってるだろ。それに、このワインをくれた奴には、大切な人と飲みました≠チて伝えとけば相手も喜んでくれるだろうしな」
「…………―――」
大切な人、という表現の仕方にラビが何処か落ち着かない様子で視線を逸らす。
きっと一種の照れ隠しなのだろう。
ティキはそれを見てくすりと笑うと促すようにラビへ言った。
「さて、ラビと初めての晩酌といこうか。遠慮しないで好きなだけ飲んで良いからな」
「今更ティキに遠慮なんてしないさ〜。そんなこと言うなら、ほんとに好きなだけ飲んじゃうぞ?」
「どーぞ。ストックはまだまだあるんで―――」
飲み頃という言葉の通り、ティキがもらったというワインはとても上等なものだった。年代や種類はさまざまであったが、どれも美味しかった。
これ程の物だ、値段としてもきっと素人など手の出しようのない代物だろう。
最初はそれをわきまえていたラビだったが、いつしか美味しさだけに心を囚われ段々と飲む量が増えていき、気が付けば自分がどれだけ飲んだのかも忘れていた。
夜はそんな彼を止めることも無く、更けていった――――――
「おい、ラビ。起きろ」
すっかり酔い潰れて居眠りをしだしたラビの肩を揺すりながら、ティキは声をかけた。
あれから数時間が経つが、その間にラビが飲み干した酒の量はティキが飲んだ量を難なく超えていた。夕食後だというのに、途中からはつまみも食べ出す始末だ。
遠慮するなと自分で言ったものの、まさかこれ程にもなるとはティキも予想していなかった。
「おい、起きろって……。こんな所で寝てると風邪引くぞ」
「………ん〜………」