Maine 2
□Night to a nightmare
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『………………――――――』
音の方へ進むにつれて、建物の崩壊ぶりは増しているようだった。そして、この辺り一帯に漂う嫌な気と匂いもまた強くなっていった。
ガキンッ、ズン、ドオン――――――
すぐ近くでその音は聞こえた。地面から、大きな振動が伝わってくる。
やはり、これは戦争なのだろうか……。
彼は一旦足を止め、考えてから音の方へとさらに歩き出した。
かつては立派な家であったらしい瓦礫の山が並ぶ路地を抜けると、そこは一気に広がって大きな広場のようになっていた。
その中心で、二つの黒い影が激しくうごめいている。
ガキィン、ズズッ、ダァン――――――!!
『…………!!――――――』
目の前で繰り広げられている光景に、彼は息を飲んで立ち尽くした。
二つの何かが、互いに攻撃し合っている。
片方は見まがうような大きさの槌らしきものを振り回し、もう片方はその大きな武器を怪しい光を帯びている腕で受け止めては払っている。
よくよく見れば、その両者とも人間だ。
『……何を、してるんだ……?――――――』
何故二人の人間同士が闘っているのか、彼には全く意味が分からない。
しかもよく見ると、武器を振り回している方はまだ成熟し切っていない子供のようだ。
もっと近くで見ようと思い、彼は気づかれないよう静かに二人の方へ近づく。比較的彼らに近い崩れた建物の陰に隠れ、様子を見ることにした。
しばらく観察していると、二人の容姿が分かってきた。
巨大な武器を持っている方は、赤い髪に眼帯という風変わりな格好の青年だった。
『……あれ。あの青年――――――』
何処かで、見たことがある気がする。
そう思ったのは、一度だけではなかった。
もう一人の彼、黒髪に黒い燕尾服姿の男も、見覚えがある気がした。
一体いつ何処で、彼らのことを知ったのだろう。もう一度考えてみるが、やはり何も思い浮かばなかった。