Maine 2

□Night to a nightmare
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『ッ……、しぶとい奴さっ……』



不意にそんな声が聞こえてきた。言ったのは、どうやら赤毛の青年の方らしい。



一時中断なのか、彼らは動きを止めて視線を通わせている。



『いい加減、楽になったらどうさ。もう若くねぇんだから』



口元を伝う血を拭いながら青年が皮肉げに言い放つ。



一方で黒ずくめの男は、口元に余裕の笑みを浮かべて相手の方を見ている。



『お気遣いどうも。だけど俺は、まだ若い方に分類されると思うぞ?』



『そんなのどうだって良いさ。俺は早く負けを認めろ≠チて言いたいんだ』



『おいおい、なんで早々自分から白旗上げなきゃなんねぇんだ?俺にだって勝てる見込みは十分あるだろ。眼帯くんより力は上だし年も上、それに数少ない美形だ』



『どこがっ、ただの天然パーマでかっこつけてるおじさんにしか見えないね』



冷静な物言いの男に、青年が思い切り嫌味を含んだ口調で言い返す。



すると男は、くすりと笑って肩をすくめた。



彼のこういう言動を見ていると、たった今青年と死闘を繰り広げていた人物とは別人のようだ。



『ま、最後のは冗談だ。眼帯くんはすぐ真に受けるから面白いな』



『なっ……!!』



からかわれたと分かると、青年は不愉快そうに眉を顰めた。と、その瞬間、男が何やら動いたのが見えた。



『………!!――――――』



瞬きをした一瞬の内に、男は青年の目の前まで移動していた。



人間技とは思えない、すごい速さだ。



『覚えておけ。そういうのが命取りになるんだ、青年』



『………!!』



すぐに青年は目前の男に向かって槌を振りかざすが、完全に振り下ろされた時にはすでに男はその場には居なかった。



『こっちだ』



『ッ!?――――――』



すぐ後ろから聞こえた声に青年は振り向こうとしたが、遅かった。



物陰から見ていた彼には、男が青年の体を軽く突き飛ばしたように見えた。が、男の手が青年に触れた次の瞬間、その体は強い勢いで吹っ飛ばされ、レンガ造りの瓦礫の壁へ激突した。

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