Maine 2
□chapter 4
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翌日――――――。
いつもより一人多い席で朝食を済ませた後、ティキとラビは仔ラビに詳しく話を聞いてみることにした。
過去の人間が未来に来てしまったのだから、何か原因があるに違いない。
とりあえず、ジジイ≠ニいう人物と森の中を歩いていてはぐれる所からの話を順に聞いていく。
「ジジイ、……っていう人とはぐれてから、お前はどうしたんさ?」
「森の中走って、探し回ったさ。……でも何処にもいなくて……」
「その後、気が付いたら知らない街に出たのか?」
「うん。全然見覚えない街だったから、すぐに森に引き返したんだけど……」
「じゃあ、知らない街に出る前……、何か変な物を見たり触ったりしなかったか?」
ラビが尋ねると、仔ラビはう〜ん……とうなって考え込んだ。
が、すぐに悔しげに首を振って答えた。
「……それが……、そこの辺りだけよく思い出せないんさ……。なんか霧がかかったみたいにモヤモヤしてて……」
一番の手掛かりがありそうな記憶が、曖昧ではっきりしないのだという。
軽い記憶喪失のようだ。
重要な点が分からずじまいだが、二人はとりあえず最初に居た森へ仔ラビを連れて行くことにした。
もう一度行って注意深く辺りを見渡せば、何か思い出すかもしれない。
「――――――どうだ?何か思い出さねぇか?」
ティキが最初に仔ラビを見つけた、森の奥にある一本の大きな樹の下でティキが仔ラビに聞いた。
しばらく辺りを見回したり歩き回ったりした後で、仔ラビは残念そうに首を振った。
「……ううん。ここは特に思い当たることが無いさ……」
この場所は、どうやら関係が無いようだ。そう判断した二人は場所を変えることにした。
それから数時間の間辺りを歩き回ってみたが、仔ラビが何かを思い出すことはなかった。
その内に、空からは小雨が降り出してきた。
「……仕方ねぇな……。雨も降ってきたし、一旦部屋に戻るか」
少々途方に暮れている二人に、ティキが提案した。二人もすぐに賛成し、部屋に引き返して雨が止むのを待つことになった。
「お腹すいたさぁ……」
帰る道中、腹の虫が鳴く音と共に仔ラビが悲しげに呟いた。
朝に部屋を出て森の中で手掛かりを探している内に、すっかり昼になってしまっていた。
「じゃあ、戻る前に街で何か食ってくか」
「ティキのおごりさ?それなら良いぞ」