Maine 2
□One self
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「………ティキ………」
この世の中で、誰よりも愛おしい人の名を呟く。
その人のことを考えてしまうが故に、彼≠フ温もりが恋しいが為に自慰行為を繰り返し、気持ちを紛らわせているのだ。
気が付けば、ラビは毎日のように行為を重ねていった。
……まさかあんな展開に発展しようとは、夢にも思わずに――――――
「………はぁ………」
ある日の夜のことだ。
しばらくの時間を眠れずに過ごしていたラビは、仕方なくいつもの行為を始めようとした。
「んっ………」
着衣の上から、ゆっくりと秘部を撫でる。
すぐに直接触れるのではなく、少しの間こうして自分を焦らすのだ。
一人だけでこういうことをするのが虚しい時もあったが、回数を重ねる度に段々と良いやり方というものが分かってきた。
「っ………、はぁっ……」
大分気持ちが高まってきた。
そろそろ本格的に始めようかとした、その時――――――
「ふーん、そんなんでもう感じてんだ」
「ッ……………!?」
突然、後ろから誰かに抱きすくめられた。
あまりに唐突過ぎる出来事に、ラビは身を固くした。
「お前、よっぽどシてんだな。一人で」
「なっ……!お、お前っ………!!」
首を精一杯ひねって横目で見た相手の顔は――――――
「……俺……っ!?」
なんと、ラビと瓜二つの顔をしていた。
「違うさ。俺はラビ≠カゃなくて、48番目の名前のディック≠セ」
そう言う声も口調も、ラビとそっくり同じだ。
「そんな………っ、お前はロードの夢の中にだけ存在してるはずじゃ………!」
「そうなんだけど。たまには外の世界も覗いてみたいなと思ったら、案外簡単に夢の世界から抜け出せてさ」
楽しげに笑いながらもう一人のラビ、――――――ディックは軽い口調でそう言った。