Maine 2
□A bookworm
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「A bookworm」
本≠チて、一番最初に作り出したのは何処の誰なんだろう。
ふとそんな疑問が思い浮かんだのは、すごく最近のことだった。
「ラビ。………ラビ」
躊躇いがちに名を呼ぶと、ラビは三秒程の間を置いて顔を上げた。
訝しげに俺を見つめるその瞳は少し刺々しい色を帯びていた。
読書をしている最中に話しかけると大体こんな感じだ。今日は特に機嫌が悪そうに見えた。
「これ、この前貸してもらったやつ。面白かったよ、ありがとな」
言葉と共に一冊の本を手渡す。ラビは「ああ」と呟きそれを受け取ると、聞いてきた。
「どの辺が面白かったさ?」
俺を見上げる翡翠色の瞳は、さっきまでの鋭さは消え期待と好奇で輝いていた。
それを裏切るまいと、頭の中をフル回転させて良い感想を考える。
「全体的に良かったけど、俺は中盤が一番面白かったと思う」
「船でのシーン辺りさ?やっぱあそこだよな!読者を退屈させない工夫がまた上手いんだよな〜。表現も良いし!」
キラキラとした表情で自分の感想を付け加えるラビ。まるで評論家のようだ。
本の話をする時のラビは、いつも楽しそうだった。
ラビが読み終わった本を俺が読んで、感想の内容が合うと満足げなそれでいてとても嬉しそうな顔をする。
初めて本を貸してもらい、感想を言い合った時のラビの表情が印象的で、今でも忘れられない。
そんな理由もあって、今ではしょっちゅう本を貸し借りするまでになった。
とは言っても俺が貸す本は、今借りて使っているこの部屋の前の住人が置いていったものがほとんどだが。
「俺、この作家結構好きなんさ!これも良いけど、もっと面白いやつがあるんだ」
すっかり機嫌が良くなったラビは、自分のお気に入りの作品を新たに勧めてくる。
「ティキにも読んでもらいたいさ!今度来る時持ってくるな」
「……難しいやつじゃないだろうな?」
「全然!歴史の話題もたまに出てくるけど、その都度説明があるから読みやすいし」