Maine 2
□Trick or Treat…?――仔ラビちゃん編――
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直後、部屋中に―――いや、部屋の外まで聞こえる大きさだったが―――何かを殴るようなガゴンッ!!というすごい音が響き渡った……。
「……はぁっ……はぁ……」
受けた衝撃に少々息を切らしながら、ラビは目の前に横たわる鹿≠見つめた。
自分でもこんな行動を起こしてしまったことに驚きを隠せない。
『……死んじゃった……のか……?』
鹿≠ヘさっきからぴくりとも動かない。殴ったのは頭だから、ただ単に気絶しているだけかもしれないが。
『っていうかコレ、人間……だよな。どう見ても』
よくよく見れば、頭は鹿だが体は普通の人間となんら変わりなかった。
あまりにも早まり過ぎただろうか……と思っていると、ぴくりと鹿≠フ手≠ェ動いた。
「……ってぇ……。まさか殴られるとは……」
鹿≠ヘ頭に手を当てながらゆっくりと身を起こした。どうやら本当に気絶していただけらしい。
だが、ラビはその声に聴き覚えがあり、目を丸くした。
「え……、もしかしてお前………!」
「あ、やっと気がついたか」
彼は呑気な声で答えると、自らの頭≠上に持ち上げた。
鹿の被り物が取れて、本人の顔が明らかになる。
「やっぱり……!ティキ!」
正体が分かった途端、ラビは体の緊張を解きながらも表情を呆れたものにさせた。
「何やってんさ!人の部屋で、……しかもこんな」
「Trick or Treat=Aだよ」
ティキの答えで、ラビは大方理解したようだった。
驚かせてしまったことを詫びた後で、ティキは訳を説明する。
「そういうことか……。じゃあアイツも今ここに居るんさ?何処に隠れてるんだ?」
「俺がおどかした後にすぐ出てくるはずだったんだけど……。おーい、もう出て来いよ」
呼びかけながら、ティキがベッドの下を覗き込む。
「まったく……、さっさと出て来いよ。往生際が――――――」
ラビも、呆れた声を出しながらしゃがみ込む。が、話の途中でティキが人差し指を唇に当てる仕草をしたので、口を閉じた。
「………何さ」