Maine 2
□The first snow of the season
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白い雪。白い息。白い空。白い肌。
冬は、全てが白で塗り替えられ他の色が一層目立つ季節。
例えば 赤い髪に白い雪。
例えば 白い吐息に赤いマフラー。
白色と赤色。
この色合い 悪くはないなと思った昼下がり。
「The first snow of the season」
パチパチと、暖炉の薪が立てる音。
風で窓がカタカタと微かに揺れる音。
静かな部屋の中には、いつものように穏やかな時が流れていた。
今はこれといった会話はないが、二人の雰囲気は普段となんら変わらず和やかだ。
ティキはソファに座って本を読んでいる。ただその内容は、学のないティキにも分かるように簡単なものだ。
こういう内容の本を、ラビは簡単すぎると言ってあまり読んだ試しがない。代わりに彼が読むのは、ティキには到底読めそうにない難しい本ばかりだ。
裏の歴史を司るブックマンにとっては必要な知識なのだと、ラビはいつも難なく言ってみせる。
そのラビも、今は読書中だ。窓辺で静かに過ごしている。
何を読んでいるのかとティキが尋ねると、法律書で6つの法典がどうとかいうそれだけで頭の中がこんがらがりそうな答えが返ってきた。
だが、珍しく読むことに集中していないようで時々窓の方をチラチラと見ている。
様子としても、なんだかソワソワしていて落ち着きがない。
「……ラビ」
先程からずっとそのことが気になっていたティキは、ついに声をかけた。
「さっきから窓の方気にして、どうしたんだ?」
「…………」
ラビは何処か思いつめたように目を伏せた後、静かに首を横に振った。
「……何でもないさ。気にしないで、続けてさ」
気にするなと言われれば、余計気になるものだ。
ティキが読書を再開してからも、ラビの不可思議な行動は続いた。