Maine 2
□The first snow of the season
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終いには本から目を離し、完全に窓の方をじっと見つめるまでになっていた。
……これは間違いなくおかしい。
訝しく思い、ティキはそっと立ち上がって静かにラビの方へと近づいていく。
ラビはティキが立ち上がったことにも気づかず、まだ一心に外を見つめている。
「―――何見てるんだ?」
「うわぁっ!!?」
すぐ近くで顔を覗き込むと、ラビは声を上げて持っていた本を床に落としてしまった。
気づいて慌てて拾い上げるその様子に思わず笑いが零れる。
「……い、いきなり何するんさ」
「あはは。お前があまりにぼーっとしてるからだろ」
「……。別に、ぼーっとなんかしてないさ……」
恥ずかしさにうっすら頬を赤くしてラビは目を逸らした。その様子も、なんだかいつもの彼らしくない。
「いや、してた。まるで誰かを待ってるみたいに、窓の外見つめてな」
「…………」
的を突かれたらしくラビが口元を歪ませ黙り込む。
「……誰かじゃなくて、何か≠ウ……」
数秒の沈黙の後、そう言ってラビは窓に歩み寄った。
「何か……って、何を待ってるんだ?」
「………、……初雪さ……」
ぽつりと、呟くように発せられた答えに、ティキは納得したようにうなずいた。
読書をしながら何度も窓の外へ目を移していたのは、初雪が降る瞬間を見る為だったのだ。
「初雪か……。確かにそろそろ降りそうな時期だもんな」
「去年の今頃はもう降ってたんだ。だからそろそろかなってさ」
「よく覚えてるな。……そうか、初雪か……」
ティキはラビの隣りに並ぶと、何かを思い出すように目を細めた。
彼が今何を思っているのかは分からないが、きっと過去のことを思い返しているのだろうと、なんとなくだが伝わってくる気がした。
「ティキは見たことあるさ?初雪」
「ああ。大分前……、子供の頃にな。ラビは?」
「俺はちゃんとは見てないんさ。いつも気がついたら降ってる感じだから」
毎回タイミングが悪いんさ、と軽く頬をかき苦笑するラビ。それから改めてティキに聞く。