Maine 2
□The first snow of the season
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「なあ、初めて見た時って、どんな感じだった?」
「んー……、小さい時だからな。よくは覚えてねぇけど、その時はきっと嬉しかっただろうな。
あーこれから寒い冬が来るのかって思うと憂鬱だけど、もちろん当時はそんなこと考えないで純粋に楽しんでた」
「へ―……。じゃあティキも子供の時は雪で遊んだりしたんさ?」
「遊びまくったな。雪合戦したり、意味もなく雪の上を転げまわったり、大きなかまくら作って中でたき火してあったまったり……。友達とはしゃいでたっけ。……懐かしいな……」
不機嫌そうな灰色の空を眺めながら、ティキは答えた。
まるで自分の過去を見つめているようなその瞳は、少し寂しげな色をしていた。
遠い日のことを懐かしむ彼の姿をラビが見たのは、これが初めてだ。
思わず黙り込んだ後で、自分も同じ方向を見ながら返す。
「……そっか。……昔は、楽しかった……?」
自分でも、何故そんな問いをしたのか分からなかった。
もしかしたら心の何処かに、ティキの話をもっと聞きたいという気持ちがあったからかもしれない。
ティキは、今度はいつものようにラビに笑いかけながら答えた。
「そりゃあ子供の時はな。今じゃ雪は寒さを連れてくる厄介者でしかないけど」
「…………」
やはり、そういうものなのだろうか。
成長するにつれ、子供の頃は楽しいものにしか感じなかった事が、今では辛く苦々しいものへと化してしまったという話はよく耳にする。
大人になるにつれて、その変化が段々と増えていくのもまた事実だ。
冬は寒くて苦手だけど、雪は好きだ。
雪が舞う景色は美しいし、何より雪遊びをするのは楽しい。
こんな素直な気持ちを、自分も大人になったら忘れてしまうのだろうか……。
そう思うと、少しだけ切なくなる。
加えて、出来るだけ長く純粋で居られる時が続けば良いと、ラビは思った。
「―――……どうした?急に黙り込んで」
「……え?あっ、いや……!なんでもないさ!」
いつの間にか一人で考え込んでしまっていたことに気がつき、慌てて答える。
その様子に、そうかと返しつつもティキは不思議そうにラビを見つめていた。
「……ま、まあ……でもさ」