Maine 2
□snow kiss
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この寒い中、後は歩いて行かないといけない訳で………――――――
やっぱり来なければ良かったと少し後悔しつつ、とりあえず駅から出ようと歩き出す。
厚手のコートにしっかりマフラーを着用しているとはいえ、ちょっと歩いただけでも凍えそうだ。
「……ま、天気が良いだけツイてたってことにしとくか……」
空は曇ってこそいるが、風はそれほどなく雪も今は降っていない。
冬の天候は変わりやすい。せめて吹雪にならないことを祈ることにした。
「わっ……!すげ……」
中央駅を出ると、すぐに市庁舎へと続く大きな通りがある。その道からすでに華やかな装飾が施され、クリスマスムード一色だ。
やはりこの時期だからなのか人通りも多く、辺り一帯はとても賑やかだ。
多いのは、小さな子供を連れた家族やカップルだ。凍えるような寒さの中でも皆楽しげで、見ていると心が温かくなりそうな光景だった。
……ここだけでこんなに人が居るってことは、広場は大変なことになってるんだろうなぁ……――――――
ティキとの待ち合わせ場所は、ここから少し行った所にある市庁舎前広場だ、ハンブルクのクリスマスマーケットでは中心的な場所ということで二人で決めたのだった。
周りの明るいムードとは裏腹に、ラビはこれから向かう待ち合わせ場所の光景を思い浮かべ思わずため息をついた。
「つーか、駅の前で待ち合わせてそっから広場まで一緒に行けば良かったんじゃ……」
ふと考えたことがよっぽど妥当なものに思えますます気分が落ち込みそうになる。
が、待ち合わせの時間までそれほど時間が無い。駅の大きな時計を見上げて確認すると、もう3時50分をまわろうとしている所だった。
広場までは急いでも10分はかかる。
そうこうしている内に辺りに夜の暗さが降りて電飾が明かりを灯し始める時刻だ。
ま、少しくらい遅れてもティキなら許してくれるだろうし、ゆっくり行くか……――――――
こんな人の多さの中で走り出す訳にもいくまい。そう自分を納得させ、再び歩き出した。
少し歩を進めていくとすぐに小さな露店が見えてきた。
独特なヨーロッパ調のかわいらしい店が、軒を連ねている。まだ数は少ない方だろうが、人々をワクワクさせるには十分な風景だ。
「予想以上に楽しそうさ……!」
いつか本で見かけた写真や絵の中の世界よりも何倍も楽しげで、段々と明るい気持ちになってきた。
店の中には、クリスマスオーナメントを売っているものや、クリスマスにちなんだ国の名物菓子を売っているものなど様々だ。
どれも魅力的で、ラビの好奇心をそそった。