Maine
□entrance
2ページ/34ページ
「寒い…」
だがそれとは裏腹に、憂鬱そうな声でラビは呟いた。
「こんな寒い日に外に出させるなんて、コムイってば人使い荒いさ…」
口から思わず深いため息がこぼれる。
それもそのはず、ラビは好きで街に来ている訳ではないのだ。
憂鬱なのも、ちゃんとした理由がある。
「ったく…、なんで俺がおつかいなんか頼まれなきゃいけないんさ…」
当初は良心で引き受けたものの、街に着いた途端に不満が爆発した。
考えてみれば、どうして自分だったのか、よく分からない。
大勢団員が居る教団の中で、自分だけが唯一ヒマそうに見えたとでも言うのか。
「…ま、実際ヒマだったんだけどさ…」
ラビは再びため息をついて顔を上げた。
目についた空は、雲で覆われていて真っ白だった。
だからと言って極端に辺りが暗いわけでもないし、人もたくさん行きかっている。
けれども何故か、日が沈んだ街に一人きりでいるような切なさをラビは感じた。