月桜鬼 第二部
□変若水の源
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* * * *
「・・・・・で?なんて書いてあるんだ?平助」
一報を聞きつけ、山南と藤堂がいる薄暗い隠れ部屋に、
近藤、土方、沖田、斎藤などの幹部達が集まってきた。
永倉に問われた藤堂は、小首を傾げる。
「ん〜〜〜?何か、話がしたいってさ」
「話??」
「胡散臭そうだなぁ・・・・」
原田も永倉も顔をしかめた。
どうしたものかと、皆が考え込んだとき、唐突に藤堂が言った。
「俺、鋼道さんと話してくるよ」
「何言ってんだ平助!罠かもしれねぇだろう!!」
驚きの声を上げた永倉に、藤堂は少し困ったように微笑んだ。
「でもさ・・・・・俺、あの人に・・・・ちょっと感謝してるからさ」
「平助・・・・・」
「もしかしたら、俺はあの時・・・・そのまま死んでいたかもしれない・・・・。
それが、あの人のお陰で、こうして皆とまた会えたし・・・・・。
ま、羅刹になっちゃったけどな」
そうおどけた藤堂の瞳には、真摯な光が宿っていた。
「そうか・・・・・・・分かった」
ずっと黙って聞いていた土方が、静かに了承した。
「でもさぁ・・・・・」
藤堂は困惑したように頭をかく。
「場所が美月神社の跡地ってなってんだ・・・・・。
俺、行ったことないんだよなぁ・・・・」
「あ、でしたら、私がご案内します」
にこやかに提案したいのりに、斎藤と沖田が反応する。
「駄目だいのり。罠だったらどうするのだ」
「そうだよ!相手が人間だったら、いのりちゃんは何も出来ないんだから」
二人の心配をよそに、いのりはきょとんとして答える。
「あら、人間だったら平助さんがいらっしゃるし、鬼だったら私は修羅になれます」
「それはそうだが・・・」
「それはそうだけど・・・・」
納得いかない様子で、二人は言い淀む。
「では、副長。俺が平助を案内するいのりを護衛します」
「あ、ずるい一君。じゃあ、僕も」
「じゃあ俺も」
「左之も!?じゃあ俺も」
「うるせぇえぇ!!そんなぞろぞろ皆で行ってどうするんだよ!!」
堪らず土方が声を荒げると、近藤が笑って制した。
「まぁまぁ、歳。皆平助が心配なんだよ。勿論俺もだ」
「近藤さん・・・・・」
何か言いたげな藤堂の視線に、近藤は頷きで応じた。
「とにかく、ここは行かないと何も始まらんだろう。
夏目君、悪いが平助を案内してやってくれないか?」
「はい!!」
「それで、罠の可能性を考えて、こっそり護衛を付けよう。今夜、手が空いているのは?」
「俺です」
原田が手を挙げると、すぐさま沖田も手を挙げた。
「僕も」
「総司、お前は駄目だ。昨日も熱を出したじゃねーか」
「それは昨日の話でしょ?」
土方に制され、むっとした表情で沖田は不機嫌そうに答える。
「まぁまぁ、歳。いいじゃないか。
平助や原田君も一緒にいるんだし、大丈夫だろう。
歳は過保護すぎるんだよ」
「近藤さん、あんたは総司に甘いんだよ!」
どっちもどっちだと、その場にいた沖田以外の人間は思ったが、
口に出しては何も言わず、ただ、半ば呆れたように笑って三人のやり取りを見ていた。