沖田総司

□芽生え 2
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麗らかな春の陽射しを浴びながら、いのりは縁側で沖田と共に、お土産の団子を食べていた。
優しい陽の光の中で、嬉しそうに団子を頬張るいのりの横顔を、沖田がにこやかに見つめる。

ふと、心地よい甘くて爽やかな香りが、沖田の鼻腔をくすぐった。
覚えのある香り・・・・・。

「なんですか・・・・・?」

突然、襟足に顔を近づけてきた沖田に、いのりは驚いてびくりと肩をすくませる。

「匂いかいでるんだ」

「え!?や・・・・・やだ!!臭いますか!?」

顔を赤くして、いのりは慌てて沖田から遠ざかろうとする。

「違う違う。女の子の匂いってどんなのかなぁって・・・・・」

「男の人と女の人の匂いに違いって・・・・・・・」

言いかけたいのりは、しばし考え、渋い顔で項垂れた。

「・・・・・ありますね」

「あるでしょ?」

確かに屯所の男臭さは、異常なほどだった。

「特に道場の防具の匂いは酷いです!!!」

「鼻が曲がる程度じゃ済まないね。目に沁みるよ。
 なんせ僕が剣術の腕を磨いた理由は、防具を付けなくても済むようになる為だからね」

二人で顔を合わせて一頻(ひとしき)り笑い合うと、いのりは自分で袖を鼻に近付けた。

「・・・・どんな匂いがしますか?」

沖田もいのりの肩に顎を付け、もう一度首元の匂いを嗅ぐ。

「・・・・・・甘い匂い」

「・・・・・・・・甘いもの食べてるからでしょうか?
 あ、もしかしたら、近藤さんから頂いた香袋の匂いかも」

少女のあどけなさに、思わず沖田から笑みが零れる。

「・・・・・・・かもね。それに温かくて柔らかい・・・・・」

そう言って沖田は体を少しずらし、いのりの胸元に頭をくっつける。
いのりの心音が心地よく頭に響き、己の心も落ち着いていくのが分かる。

沖田の意外な行動に、いのりはどうして良いか分からず、とにかくよしよしと頭を撫でる。

「あ・・・・・それ、気持ちいい・・・・・もっとやって・・・・・?」

そう言って、沖田は和やかな笑みを口元に浮かべ静かに目を瞑り、いのりの太腿にごろりと寝転がった。

「沖田さん・・・・・・・」

「・・・・・・何?」

己の図々しさにいのりが不快に思ったかと、内心沖田はひやりとしたが、

「沖田さんて・・・・・猫さんみたい。髪の毛に腰があって、感触が楽しいです」

くすりと笑って、いのりは頭を撫でてくれた。

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