沖田総司

□愛の形
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僕は、近藤さんの刀だから・・・・。

以前、いのりちゃんにそう言った事がある。

幼い頃に、そう誓ったんだ。
この人のために、刀を振るうんだって・・・・。

「沖田はん・・・・」

艶(つやや)かな声を耳元で囁(ささや)いた女は、きっと、僕の心がどこにあるかなんて、知らない。
知る気もないだろう・・・・・。


* * * *


池田屋の数日後、快気祝いだと、左之さんと新八さんが花街に僕を誘ってくれたけど、
本当はそれを口実に、自分たちが島原で遊びたかっただけだろう。

でもまぁ、二人の心遣(こころづか)いは分かっていたから、一応同行はしたけど、すぐに帰るつもりだった。

だけど、変に気を回した新八さんが、勝手に僕に女を宛(あ)てがってきた。
全く、余計なお世話だよ。
どうやら女の方から、僕を指名してきたらしいけど・・・・・なんだかどうでもいい。

布団が敷かれた一室に連れて行かれ、酒を飲まされる。
女が酌をしてくれるけど、白粉(おしろい)の匂いで胸がムカムカして美味しく感じられない。

ううん、それだけじゃないな・・・・。

ああ、きっとこのムカムカは、屯所に残っているあの子が、一君や平助と一緒に花火をすると聞いたからだ。

嫌だなぁ・・・・・。
僕はここで何をしているんだろう・・・・・。

僕が居ない間に、あの子が違う誰かにあの笑顔を見せているかと思うと、腹立たしくなってきた。

「ねぇ・・・・・沖田はん・・・・」

無反応な僕に業を煮やしたのか、女が撓垂(しなだ)れ掛ってきた。
苛立ち紛れに僕は勢いよく立ち上がり、尻餅をついた女を尻目に、部屋を出ていった。
女の罵る様な声が聞こえたけど、知った事か。

半ば駈ける様に、僕は島原を出た。

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