沖田総司
□愛の形
1ページ/2ページ
僕は、近藤さんの刀だから・・・・。
以前、いのりちゃんにそう言った事がある。
幼い頃に、そう誓ったんだ。
この人のために、刀を振るうんだって・・・・。
「沖田はん・・・・」
艶(つやや)かな声を耳元で囁(ささや)いた女は、きっと、僕の心がどこにあるかなんて、知らない。
知る気もないだろう・・・・・。
* * * *
池田屋の数日後、快気祝いだと、左之さんと新八さんが花街に僕を誘ってくれたけど、
本当はそれを口実に、自分たちが島原で遊びたかっただけだろう。
でもまぁ、二人の心遣(こころづか)いは分かっていたから、一応同行はしたけど、すぐに帰るつもりだった。
だけど、変に気を回した新八さんが、勝手に僕に女を宛(あ)てがってきた。
全く、余計なお世話だよ。
どうやら女の方から、僕を指名してきたらしいけど・・・・・なんだかどうでもいい。
布団が敷かれた一室に連れて行かれ、酒を飲まされる。
女が酌をしてくれるけど、白粉(おしろい)の匂いで胸がムカムカして美味しく感じられない。
ううん、それだけじゃないな・・・・。
ああ、きっとこのムカムカは、屯所に残っているあの子が、一君や平助と一緒に花火をすると聞いたからだ。
嫌だなぁ・・・・・。
僕はここで何をしているんだろう・・・・・。
僕が居ない間に、あの子が違う誰かにあの笑顔を見せているかと思うと、腹立たしくなってきた。
「ねぇ・・・・・沖田はん・・・・」
無反応な僕に業を煮やしたのか、女が撓垂(しなだ)れ掛ってきた。
苛立ち紛れに僕は勢いよく立ち上がり、尻餅をついた女を尻目に、部屋を出ていった。
女の罵る様な声が聞こえたけど、知った事か。
半ば駈ける様に、僕は島原を出た。