山崎烝の新選組日記

□隊服が支給されるの事
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某月某日



藤堂さんが満面の笑みで俺を呼び止めた。

「なぁ、山崎君」

「何でしょう?」

「これ投げて」

そう言って渡されたものは、手裏剣だった・・・・・。

「・・・・投げた事が無いので、出来ません」

俺が断ると、藤堂さんがまるで恐ろしい事を聞いてしまったかのように驚愕し、目を見開いて俺を見た。

「う・・・・嘘だろ・・・・?だって・・・・山崎君は忍者だろ?」

俺は鍼医者の息子で、武士に憧れて浪士組に参加しただけで、忍者というわけではない。
当然、忍者が忍びの里で修行し、習得する忍術など何一つ知らない。

「俺は忍者じゃありません・・・・一体どうして・・・・」

俺の疲れた様な声に、藤堂さんは申し訳なさそうに頭をかいた。

「いや、だってさ・・・・山崎君は、武士に憧れ浪士組に参加した鍼医者の息子というのは仮の姿で、
本当は伊賀の里で忍術の修行をしているうちに、何だか武士の方がかっこいいとか思い直し、
里を抜け出して武士になるべく浪士組に参加した鍼医者の息子を演じて、
見事浪士組の忍者になった忍者だって・・・・」

なにそれ・・・・・・結局、俺、忍者じゃね?

俺は痛むこめかみを抑え、一応聞いてみた。

「誰がそんな事を・・・・」

「ん?総司だけど・・・・」

やっぱり・・・・・!!

「ふ・・・・・ふふ・・・・ふふふふふ・・・・」

「あ・・・あれ?や・・・・山崎君?」

「なんですか?」

「え・・・いや、何か・・・・笑顔が怖い・・・・」

おっと、つい、感情が表に出てしまったか。俺もまだまだだな。

「いえ、暗殺術くらい学ばないといけないと思いまして・・・・」

「・・・・え?」

「ほら、俺って忍者らしいですから・・・・」

それだけ言い残して、石のように固まった藤堂さんを残して、俺はその場を笑みを漏らしながら去った。

うむ。忍者も悪くない・・・・。







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