山崎烝の新選組日記

□我、呼び名を考える
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中庭にあいつがいる。

近藤さんにあいつを呼んで来いと言われた。

あいつは後ろ姿で、集中して洗濯をしているのか、俺に気付かない。

仕方なく、俺は大声でそいつを呼んだ。



「おい!井吹龍之介!!」

急に背後から大声で名を呼ばれ、そいつは飛び上がった。

「な・・・・・なんだよ。びっくりした・・・・・」

眼を白黒させている井吹龍之介に、おれは宣言する。

「お前の呼び名が決まるまで、お前の名前は井吹龍之介だ」

「・・・・・・別にあんたに言われなくても、俺はずっと井吹龍之介って名前なんだけど・・・・」

俺の崇高な悩みも理解できないようで、井吹龍之介は訳が分からんと言わんばかりに当惑の表情で俺を見る。



ふん・・・・・・新たな悩みが増えてしまった・・・・・。

あいつの呼び名を考えなくては・・・・・・。

俺も副長に似て、苦労性だな・・・・・。



俺が去る後ろ姿を、井吹龍之介は呆然と見送った・・・・・・・。



「あ、しまった。近藤さんにあいつを呼んで来いと言われてたんだった」
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