山崎烝の新選組日記
□我、新たな趣味に目覚める(!?)の事
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任務の為に女装していた俺は、着慣れぬ振袖と影から伸びた腕に自由を奪われ、裏路地へと引っ張り込まれてしまった。
口には猿ぐつわをされ、声も出ない。
背後から囁(ささや)く悍(おぞ)ましい男の声が、必死に拘束から逃れようとする俺の耳を、不快にくすぐる。
「へへへ・・・・・お嬢ちゃん、ちょっと俺らと遊ぼうや・・・・」
ぐああああぁぁぁ!!!気持ち悪いぃいぃぃぃ!!
思いっきり刀でナニをぶっ刺したいレベルだ!!
悪寒が背筋を走り、全身に鳥肌が立つ。
俺が怒りにわなないているのを、怯えて震えているのと勘違いしたのか、
突然背後の男は、不躾に俺の胸元を弄ってきた。
「・・・・にひひ・・・・お嬢ちゃん・・・・良い躯(からだ)してはるなぁ・・・・」
しまったぁああ!!詰め物を入れ過ぎたか!!!
そう思ったが、もはや後の祭だ。
早くこの気色の悪い男の手から抜け出し、この極度の嫌悪感を晴らすべく、それ相応の報いをせねば!!
そう考えた矢先、俺は更なる影を眼の端に捕らえた。
「お、なんや。もう捕まえたんか」
「早かったなぁ」
まだ二人いたのか!?
俺の頭にかっと血が上る。
「あの一緒におった男、阿呆やなぁ。ずっと茶屋から後付けてきたん、全然気ぃ付かへんのやから」
俺の背後から首筋に、薄気味悪い声が滴り落ちる。
こいつら・・・・・ずっと後を付けてきたのか!?
俺も気付かなかった・・・・・不覚!!
任務を終え、早く元の姿に戻りたいと、気が緩んでいたのは俺も同じだったのだ・・・・!!
だが、ここで打ち拉(ひし)がれていた所で事態は好転しない。
何とかしなくてはと、俺は周囲を窺(うかが)った。
どうやらこの男達は、先ほど内偵した不逞浪士でも、倒幕の志士でもなさそうだ。
そこら辺で小さな悪事を働く破落戸(ごろつき)どもだろう。
本来ならこの程度の奴らなら、俺一人で片付けられるものを・・・・・!!
俺が歯ぎしりしていると、男達は下卑た笑みを浮かべた。
「なんや、結構気ぃ強い女子(おなご)やなぁ・・・・さっきからごっつぅ睨んできよるわ」
「そう言う気ぃ強い娘を、無理矢理手篭(てご)めにするのがええんやないか」
「そうそう、あんたがそない別嬪(べっぴん)やから悪いんやで」
勝手な事を!!!!
振袖で着飾ったのも、綺麗に化粧をしたのも、胸に詰め物して体の線を美しくしたのも、お前らの為じゃねぇええぇぇえええ!!!!!!!
理不尽極まる理由で下種い男に狙われている、世の女子(おなご)達の苦境に対し、俺は義憤(ぎふん)に燃え立った。
こんな卑劣な奴らは生かしておけん!!!!!
男として再起不能にしてやる!!!!
俺が憤激している間に、破落戸どもが力づくで、強引に俺の振袖の襟元を開(はだ)けさせる。
すると俺の胸元が開き、詰め物がぽろりと落ちた。
残ったのは、引き締まった筋肉の付いた、厚い胸板だ。
一瞬何が起こったか分からず、ぽかんとした目前の男に、俺は思い切り金的をかましてやった。
「!!っが・・・・・・!?」
ざまぁみろ!!!
男は声も出せず、悶絶して地面を転がる。
「お・・・・おい!この女!!なにしてんのや!!大丈夫か!?」
仲間の悲劇に男達が熱(いき)り立つ。
「優しゅうしとったら、つけあがりよって!!」
うるせぇええええぇえぇぇ!!
この乳のない胸板を見てみろ!!どう見ても男だろうが!!!!
俺がもう一度、別の男に金的を食らわそうと足を出したが、完全に読まれていたらしく、しっかりと掴まれてしまった。
くそっ!!!
卑猥(ひわい)で野卑(やひ)な笑みを浮かべ、足を掴んだ男は俺に迫る。
「いひひひ・・・・・ええ格好やで?」
薄暗い裏路地の所為か、はたまた自分たちの節穴を認めたくないのか、男達は尚も俺を陵辱しようとする。
俺の足を持ち上げ振袖の裾(すそ)を捲(まく)ると、男は毛むくじゃらの薄汚い手を、俺の局部に伸ばそうとした。
ぎゃああああぁぁあぁあああああぁぁあああ!!
俺の人生最大の危機ぃいいいぃい!!!!
さっさと助けに来いいいぃぃぃい!!!沖田ああああああぁあぁぁ!!!!
俺は涙目で必死に叫んだ。