ONE PIECE(シャンクス長編)

□海辺の朝
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 ユウが目覚めた時、ミナミと男はまだ眠っていた。

 意識が朦朧とするので海水で顔を洗うと、冷たい刺激で昨日の記憶が蘇ってくると同時に、猛烈な空腹感も一緒に襲ってきた。

 昨日一日何も食べずにあれだけのことがあったのだから無理もなかった。


「――腹減ったな」


 呟いても食べ物が出てくるはずがなく、家の冷蔵庫がいかに素晴らしいものか思いしった。

 ユウはもう一度顔をしっかり洗うと、2人のもとへと戻った。

 ミナミはいびきをかきながら大の字になって寝ていた。
 こんな場所と状況でこの爆睡ぶりはさすがとしか言いようがない。
 その横に目をやると、赤い髪の男が仰向けになっていた。

 昨日は暗闇と気が動転していたせいで気がつかなかったが、左目に3本の傷があるものの、日本人ばなれした端正な顔立ちをしている。
 外国人かハーフなのだろうか。
 そんなことを考えながら目線を下におろしていくと、あるところでユウの視点がとまった。


「左腕が――ない」


 普通ならばあるはずの左腕が、その男にはついていなかった。
 
 赤い髪、左目の傷、片腕――ユウの思考は嫌なほうへと傾いていく。


「もしかして、ヤクザ――?」


 嫌な汗がユウの頬を伝うのがわかった。
 やはりミナミのあの癖をみた後に、ろくな事は起こらない。


「うっ――」


 その時、男の眉がぴくりと動いた。
 そしてゆっくりと瞼が開かれていく。


「――だれ、だ」


 突然声を発した男の言葉をユウは理解できなかった。


「お前、誰だ――」

 2回目でやっと理解することができた。


「あの、えっと、俺の名前、は、ユウ、です」

「――ここはどこだ」

「知らない、無人島、です」

「そうか……」


 男は一通り質問を終えると、ゆっくりと上体を起こしてマントの砂を払った。
 ユウはその時初めて男の腰に立派な刀がぶら下がっていることに気がついた。
 それはこの男がヤクザだという確信をさらに深めた。
 とりあえずなるべく距離をおいておこうとユウは後ずさりをした。


「うわっ!?」


 二三歩下がったところでユウは何か柔らかいものに躓いてしまい、思いきり尻餅をついてしまった。

「ぐえっ」

「うわっ、ミナミ!?」

 躓いたものは爆睡していたミナミで、ユウはそのお腹に尻もちをついたのだった。


「どいてよユウッ!」

「あ、ごめん」


ユウがお腹から退くと、ミナミは呻き声をあげながらお腹をさすった。


「痛いじゃない、馬鹿ユウ! 女のお腹にお尻のせるなんてあり得ない!」

「ごめん、悪気はなかった」

「悪気がなかったで済むわけないでしょ!」

「そんなことより、ほら、男の人が起きたんだ」


 怒りをなんとか鎮めようと、ミナミの意識を男のほうへやると、ユウの思惑通り、彼女は目を開けた赤髪の男へと興味がうつった。


「おじさん起きたんだ! ねぇおじさん、名前は何ていうの?」


彼は眼を細めて少し困惑したような表情をみせた。
ミナミはその表情に一瞬感じたことのない感情を覚えたが、それが何なのかは本人にもわからなかった。



「――シャンクス」

「シャンクス……? 変わった名前ね。外国人? それともハーフ? どうして海に流されたの?」


 次々と発せられる質問に赤い髪の男――もとい、シャンクスは顔をしかめた。


「よくわからないが――流された原因は、仲間に落とされたからだな」

「えーっ、何それ。殺されそうになったってこと!?」

「いや、遊んでいる最中に弾みで海に落とされただけだ」


「遊びで海に落とすって、どんな連中だよ!?」


 ユウはますます目の前のシャンクスと名乗る男がヤクザにしか見えなくなったのだった。


「ねえ、シャンクスの落とされた経緯、もっと詳しく聞きたいな」

ユウの気も知らずに、ミナミは無邪気な笑顔を浮かべてシャンクスにせがむ。
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