ONE PIECE(シャンクス長編)
□2人と海賊
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最初に『それ』に気が付いたのはミナミだった。
シャンクスは当然だというような顔をしていたが、やはり少しほっとした様子をみせた。
「あれが俺たちの仲間だよ。変人ばかりだがみんなイイ奴だ」
そういうあんたも変人だよ、とユウは思いながら『それ』を凝視した。
「わーっ、すっごい船! 本当に乗せてくれるの!?」
「ああ、もちろんだ。レッドフォースはいい船だぞ」
「やったーっ! ねえユウ、楽しみだねっ」
ミナミが『それ』――レッドフォース号をみて興奮するのも無理はなかった。
今までに鉄のかたまりの船は何度か見たことがあるものの、レッドフォースは木材で、しかもかなりの大きさがある。
それが海の上を悠々と滑るように航海している様は圧巻だった。
「お頭、無事だったか!?」
その船から何人もの男が身をのり出して、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。
ユウはその男たちの人相の悪さをみて、逃げ出したくて堪らなかった。
しかも悪人ヅラの男たちは、自分の横でヘラヘラと笑っているシャンクスを「お頭」と呼んでいるのだ。
ユウが泣き出しそうなのを他所に、二人はレッドフォース号に乗り込んだ。
「ユウ! 早くしないと置いてっちゃうよー」
ミナミは目を輝かせながら、そう叫んだ。
――ヤクザの船だろうがなんだろうが、今は乗るのが最善策だ。
ユウはそう自分に言いきかせ、船に乗り込んだ。
船上は想像よりも広く、船員もかなりいた。
何人もの船員がシャンクスを取り囲み、楽しそうに会話をしている。
ミナミもちゃっかりとその輪に入って厳つい男たちといつもの明るい調子で喋っていた。
輪に入れなかったユウが船内をキョロキョロと見渡していると、横から不意に声がした。
「お前たちがお頭を助けてくれたみてーだな」
煙草を蒸かす姿が似合う、渋い雰囲気の男は低い声で言った。
顔は怖いけれど、他の船員とは違う落ち着いた態度と口調にユウは少し安心した。
「俺たちこそシャンクスさんに助けられました。船がシャンクスさんを助けに来なかったら、あの島でのたれ死んでいました」
「そうか。助けられたのはお互い様みてえだが、お前たち2人がお頭の命の恩人ということに変わりはない――たっぷり礼をしねぇとな」
ゆらゆらと煙を漂わせている男――副船長であるベックマンは普通にほほえんだつもりだったのだが、眼光の鋭さと元の顔つきの悪さで、ユウを怯えさせただけだった。
「れ、れれれ、礼ってなんですか!? まさか海に沈めるとか、人身売買とか、臓器を――」
「何わけのわからないことを言っている。礼っつーのはお前たちを故郷まで送りとどけるってことだよ」
ベックマンの呆れたような顔を見て冷静になったユウは、慌てて「ですよねー!」と言って苦笑いをした。