恋一小説続き物

□黒崎先生の事情9
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「しまった!やり過ぎた」
一護が地面に着地すると、数メートル先で恋次が受け身もとらずに顔面から転がったのが見えた。
「恋次!悪い大丈夫か?」
声をかけたが、恋次は完全に気を失っていてすぐには起きそうもない。
追い掛ける内にむきになりつい、何時も父親を蹴り飛ばす感覚でやってしまった。
「どうしよう…」
夜遅いので人通りや車の往来はないが、恋次が目覚めるまで道路の真ん中にこうして居るわけにもいかない。
困った一護が辺りを見回すと少し先に小さな休憩スペースが見えた。
一護はそこまで恋次を運ぶ事にした。
「…っと」
恋次をベンチに慎重に寝かせる。
そこは公園と言うには小さな空き地で花壇とベンチしかない。
「ん、大丈夫そうだ」
一護は恋次を確認したが、あれだけ派手に顔から転んだのに大きな傷はなく、地面に擦った所が少し赤くなっている程度だった。
念のため脈もとって診たが気絶しているだけだ。
少しでも寝苦しく無いように恋次の頭を少しずらし、自分の膝の上に乗せて座るとようやく一護も落ち着いた。
「あぁ!…どうしよう…」
改めて恋次の顔を見る、たった二週間なのに恋次を見るのは酷く久しぶりな気がした。
あれから、一護は恋次の事を考えない日はなかったが、結局考えは纏まらないままだった。
なのに逃げる恋次を見て衝動的に追い掛けてしまったのだ。
「…恋次」

一護は本当は今のままでいたい、と思っていた。
先へ進むのは恐ろしい、これ以上の関係に進めばもう取り返しが付かなくなる。
それでも檜佐木と恋次のキスシーンを思い出す度に胸の中でモヤモヤした黒いモノが渦巻くのを感じた。自分が断るという事はあのシーンが繰り返される事になる、かもしれない、その時に恋次の友達として笑って隣に居られるのかどうか…
答えが出ないままただ日付が過ぎ、ここのところなかなか寝付けない日が続いていた。
そんな時、気分転換に窓を開けたらそこに恋次が居たのだった。
始めは幻かと思ってしまったが、恋次が逃げる後ろ姿を見て反射的に追い掛けてしまっていた。
一護は恋次の乱れた髪を撫で付け、優しく頬に触れる。
寝ている姿は初めて見る。


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