恋一小説続き物

□黒崎先生の事情2
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「イタタタ」
一護の強烈なパンチを喰らって頬が少し腫れてきているみたいだ。
医者に行って怪我をして帰るのは何度目になるのか、一護とイチャイチャ出来るならこのくらい安いものだ。
「ツンデレって奴だよなー」
可愛くてしょうがねぇ、駅に向いながら思い出してはニヤけてしまう。
「お!ここは…」
駅に向かう道の、何の変哲もない電柱の脇、ここで俺は一護に出会った。



駅前に店を構えて半年、ずっと夢だったシルバーアクセサリーの店俺が選んだブランドや作家の作品を置く店だ。
形にするまで数年かかったがオープンしてからはさらに忙しく、休みなんて全くなかった。
身体は丈夫な方だと油断もしていた。
「やべー目の前がぐるぐるしやがる」
その日朝から調子が悪く、なんとか営業時間を終えアパートに帰ろうとしているところだった。
夕日も沈み大分経つ、駅前は店のネオンが眩しいが少し路地を曲がると、街灯の明かりだけだ。
ふらふらとなんとか歩いていたが、足が縺れ電柱の横のごみ箱にぶつかるとそのまま倒れ込んだ。
「うっ…いってー」
起き上がろうと上を向くと吐き気さえしてきて、身動きができない。
帰宅時間なので人通りが無いわけではないが、柄の悪い俺が寝転んでいても誰も手をかそうとしない。
それどころか皆係わり合いになりたくないと視界にも入れない様にして通り過ぎる。
『当たり前か…ちょっとここで休んで…しばらくしたら帰ろう…』
そう思い電柱に凭れかかり目を閉じた。
熱で朦朧としていて、どれくらいそこにいたのだろうか
「おい…お…おま…しっかりしろ」
ふと温かい手が頬に触れた。
「すげぇ熱じゃねぇか!こんなところで寝てたら死ぬぞ」
やっと目を開けると始めに目に飛び込んで来たのは温かなオレンジ色、街灯に照らされた青年の髪がキラキラと光りを反射していた。
「大丈夫か?起きられるか?」
心配そうに覗き込む青年は恋次には天使に見えた。
無意識に逃がさない様腕を延ばし抱きしめると、その青年も抱き留めてくれた。
そうして彼は俺を抱き起こすと、ほとんどでくとかした俺を背負って彼の家まで運んでくれたのだ。

「少しは楽になったか?」
まさか助けてくれた彼が医者だとは思わなかった。
白い白衣を着て氷嚢を変えてくれる。
点滴を受けながらリアル白衣の天使を眺めてると気分も良くなる。「家は入院は基本的には受けてねぇんだけど今日は泊まってけよ」
しかし運が良かったななどと言いながらにかっと笑いかけてくれる。
彼に俺は恋をしたのだと気付いた。


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