恋一小説続き物

□黒崎先生の事情2
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『一角さんじゃねぇが本当にツイてたぜ』
恋次は一護の献身的な看病を受け、と言っても翌日には退院したし、しっかり医療費も取られたがとても幸せな時間を過ごせた。
その後なんだかんだ口実を作っては通ったり、遊びに誘い出したり
涙ぐましい努力を重ねたが、わざとかと、思われる程の鈍感で一護に全く気付いて貰えなかった。
この前告白のついでに焦って無理矢理押し倒してしまったが、結果的に成功と言っていいだろう。
「一護も俺の事ぜってー好きだ」
一護は本気で嫌がっていないと核心していた。
本気で嫌ならいくらお人よしの上に馬鹿が付く一護でも俺を受け入れないはずだ。
やっぱり男同士てのがネックになっているんだろう、一護は見かけによらず硬派だし。
一護がほだされるまで押しまくる、そうなる日も遠くないはずだ。とこの時は考えていた。




日曜日
一護と遊びに出かけようとしていたので暇になってしまった。
一人で家でぼんやりするのもなんなので、市場調査もかねて隣町まで買い物に出かける事にした。
調査のためアクセサリーショップやジュエリーショップを回るがついつい気付くと一護に合いそうな物を選んでしまっていた。
「俺ってなんて健気なんだ」
こんなに純粋に好きになるのは初めてで、自分の気持ちに感動を覚え一人ごちた。
せっかくシルバー屋なのだから、一護に何か贈りたいと思っている。
やるならリングかネックレスか…
一護はピアスを開けていない、俺にはよく解らないが、職業がら出来ないのかもしれない。
でも普段見えないところだったらどうだろう。
例えば、乳首とか、一護は恥ずかしがるだろうがその姿を想像するだけでご飯十杯はイケそうだ。
しかもただでさえ敏感な一護がさらに感じ安く…
などとボディピアスを持ち不埒な事を考えていたからだろうか、視界の端に一護のオレンジ色の髪が横切った気がした。
幻かと思ったが、ピアスを棚に戻し店を出ると、やはり間違いなく一護の後ろ姿が人並みの中に見えた。
「おーい!一護ー」
『なんだ用事って一護も買い物だったのか、しかしこんなところで偶然会えるなんてやっぱり運命だな!』
などと考えながら走りよった。
「?」
一護は声の主を探してキョロキョロしだした。
恋次が近付くと一護はこの前渡したシャツとネクタイをしてくれていた。
恋次は着てくれたのか、と小躍りしたい気持ちで一護に突撃しようとしたが
「なんだい君は?」
と見知らぬ眼鏡のひょろい鉛筆みたいな奴が恋次と一護の間に立ち塞がる。
声の位置が分からず反対方向を向いている一護の肩に手をかけて、まるで自分の物の様に一護を引き寄せた。
「黒崎、君の知り合いか?」
眼鏡を神経質そうに上げる、レンズの奥の目はまるで俺を不審人物の様に捉えている。
「あーまあ知り合いちゃ知り合いだな」
眼鏡野郎の質問に、一護はばつが悪そうに曖昧に答える。
「よう、偶然だな恋次」
眼鏡野郎が今だに肩に手を置いているのに嫌がるそぶりも見せない一護に愕然となる。
一護はスキンシップが苦手だと思っていた、俺には普通に触られるのも嫌がって逃げるのだ。
本気で嫌がられていたのか…
「あー石田、こいつ恋次、もと患者でちょくちょく家に来てるんだ」
一護の認識では俺はその程度なのかと内心泣きそうになる。
「彼はちょくちょく通院する程病弱には見えないが…」
手は放したものの何か気付いているのか、こちらを睨んでいるような気がする。
「まあな…えーっと恋次こいつ石田な俺の…」
「大切な存在だお互いに」
一護の言葉に被せて石田と紹介された眼鏡がそうのたまあった。
事実上これは宣戦布告だと感じたが。
「石田…なんだその恥ずかしい表現は」
と頬を赤らめて一護が言ったのを聞いた瞬間これは敗北宣告だと気付いた。

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